• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実施状況報告書

18世紀フランスにおける博物学の興隆と描写詩―ビュフォン受容の問題を中心に

研究課題

研究課題/領域番号 23720180
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

井上 櫻子  慶應義塾大学, 文学部, 准教授 (10422908)

キーワード仏文学 / 美学 / 哲学
研究概要

本研究課題の第2年度である平成24年度には、特にサン=ランベールの『四季』を再読しながら、おもにこの作品と『百科全書』との関連に注目しながら研究を進めた。そしてその研究成果の一部を、国際研究集会における口頭発表や、以下に挙げるような国内の学術雑誌への論文投稿という形で公にした。
まず、2012年9月29日~30日にかけて慶應義塾大学にて開催された「啓蒙思想と『百科全書』にかんする日仏研究集会」において、サン=ランベールの主要著作『四季』と『百科全書』に展開されるディドロの人間論との関係を明らかにすることを目的とした研究発表(仏語)を行った。サン=ランベールと『百科全書』との関わりについては、これまでまとまった研究がなかったため、本研究課題の研究代表者の発表は、日本、およびフランス本国の『百科全書』の専門家から高い関心を集め、研究報告後彼らと活発な議論を展開することができた。この研究集会への参加を通して、今後、サン=ランベールの『四季』生成過程に関する研究を進める上での方向性が明確になったと考えられる。なお、この研究集会の報告書は、『百科全書』研究会が刊行する『「百科全書」・啓蒙研究論集』第2号としてすでに出版されている。
また、『百科全書』の項目が、サン=ランベールが『四季』第二歌「夏」に注釈をほどこすにあたり、どのような影響を与えたかという問題についての研究成果を、慶應義塾大学藝文学会が刊行する『藝文研究』に発表した。
夏にはフランスに二週間あまり滞在し、フランス国立図書館で博物学や描写詩の発展に関する資料収集を進め、さらにはパリ大学を中心とする研究機関に所属するフランス詩の専門家との学術交流を行った。その成果は平成25年度以降学術論文などを通して公表していきたい。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

平成24年度は本研究課題の第二年度であったが、先に述べたように国内外の研究者をまじえた研究集会において研究成果の一端を発表したことにより、その独創性を広く認めてもらうことができた。のみならず、とりわけフランスの『百科全書』研究者と新たに緊密な研究のネットワークを築くことができた。百科全書派、とりわけディドロと親交があったサン=ランベールの作品研究を進めていく上で、今後きわめて有益なアドバイスが受けられると予想される。
また、夏のフランス滞在時には、博物学的著作についての資料収集を行っただけでなく、サン=ランベールの『四季』について、新たな異本を発見することができた。今後の研究に役立てていきたい。
以上の点から、本研究課題は当初の計画以上に進展していると言える。

今後の研究の推進方策

平成25年度は、ひきつづきサン=ランベールの作品研究を進めてゆきたい。『四季』に描かれる自然の表象と博物学との関係という本来の研究課題に取り組むのみならず、今後はサン=ランベールと『百科全書』との関連についても探っていきたい。サン=ランベールが『百科全書』の読者であり、またさまざまな重要な項目の執筆者であったことが、『百科全書』という巨大な事典が誕生する過程においてどのような意義を持ったのかという点については、いまだまとまった研究がないのが現状である。そして、この点についての研究成果が、『百科全書』の研究者からも期待されていることが明らかになった。これまで、サン=ランベールの代表作『四季』に考察の焦点を当てて、研究を展開してきたが、今後は彼の哲学的著作にも視野を広げることにより、18世紀フランス文学研究に新たな知見をもたらすことを目指したい。
また、サン=ランベールの作品についての研究成果を踏まえつつ、ドリールやルーシェにおける自然描写と博物学との関連についてもさらに考察を深めていきたい。

次年度の研究費の使用計画

主たる使用方法は、物品費および旅費である。
まず物品費の内訳については、現在刊行中のビュフォン全集批評校訂版をはじめとする18世紀の博物学関係の著作、およびアンシャン・レジーム期に発表された自然の歌に関する著作といった書籍の購入費が大部分を占めると予測される。また、必要におうじて、文房具、パソコン周辺機器など研究の遂行に必要な消耗品の購入費にも充てたいと考えている。
そして旅費については、夏期休暇期間中のフランス渡航費(航空券)、および二週間分ほどの滞在費(宿泊代、日当)としての使用を予定している。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Jean-Francois de Saint-Lambert, lecteur et collaborateur de l'Encyclopedie : autour d'une note sur < l'Ete > des Saisons2013

    • 著者名/発表者名
      INOUE Sakurako
    • 雑誌名

      『百科全書』・啓蒙研究論集

      巻: 2 ページ: 115-130

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 『百科全書』の読者にして寄稿者、ジャン=フランソワ・ド・サン=ランベール―『四季』第二歌「夏」の注釈をめぐって―2012

    • 著者名/発表者名
      井上櫻子
    • 雑誌名

      藝文研究

      巻: 103 ページ: 133-148

  • [学会発表] Jean-Francois de Saint-Lambert, lecteur et collaborateur de l'Encyclopedie : autour d'une note sur < l'Ete > des Saisons2012

    • 著者名/発表者名
      INOUE Sakurako
    • 学会等名
      Colloque franco-japonais sur les Lumieres et sur l'Encyclopedie
    • 発表場所
      慶應義塾大学
    • 年月日
      20120929-20120930

URL: 

公開日: 2014-07-24  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi