研究課題/領域番号 |
23720183
|
研究機関 | 鹿児島県立短期大学 |
研究代表者 |
中谷 彩一郎 鹿児島県立短期大学, 文学科, 准教授 (30527883)
|
キーワード | ダフニスとクロエー / 古代ギリシア恋愛小説 / 牧歌 / 受容史 / 書誌学 |
研究概要 |
4年間の研究計画のうち前半の2年間では『ダフニスとクロエー』の翻訳作業とテクスト分析、および受容研究に向けた資料調査を行った。計画も後半に入り、現在は『ダフニスとクロエー』の受容史を中心に研究を進めている。前年度にひきつづき、夏休みには3週間の海外調査に赴き、イギリスの大英図書館で稀覯本の調査を行った。また、ケンブリッジ大学セント・ジョンズ・カレッジでは世界でも数冊しか現存しないジャック・アミヨ訳『ダフニスとクロエー』第二版(1578)の調査を行い、写真撮影もおこなった。ロンドンではウォレス・コレクションを訪れ、あらためて『ダフニスとクロエー』の絵画作品(フランソワ・ブーシェ他)の調査を行った。 研究成果の一端としては、「ピエール・ロジョン『ダフニスとクロエー』の三種の台本について」という論考を発表した。これは大英図書館に保存されているジョゼフ・ボダン・ド・ボワモルティエのオペラ・バレの総譜(1747)に付された台詞と再演の際に出版された台本(1752)およびロジョン全集(1811)に収録されている作曲家ベルナルド・メンゴッツィのための改作台本を比較したものである。その際にロジョンの一本目の台本を使ったボワモルティエのオペラ・バレについて、恩師であるジョン・モーガン教授(連合王国スウォンジー大学)もたまたま論文を執筆中であることがわかり、意見交換を行うことができた。 また、これまでほとんど知られていなかった矢野目源一訳による日本最初の『ダフニスとクロエー』の翻訳について、すでに脱稿済の英語論文 'The First Japanese Translation of Daphnis & Chloe' がようやく出版社に原稿を送るとポルトガルの編者から連絡があり、最終チェックをおこなった。今年度中には刊行予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
震災に伴う一年目の研究開始の遅れと学内業務多忙のため、当初の遅れがまだ取り戻せていない。ただ、1年目は下準備、2、3年目に海外調査、3、4年目に執筆作業および研究発表という予定だったので、大幅に遅れているわけではない。3年目の研究業績の点で、3本の論文を同時並行的に執筆していたものの、年度内に発表できたのが1本だけで、2本が執筆途中のままになったのが予定外であった。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度なので、研究成果のアウトプットを中心に行う予定である。昨年度書き終わらなかった2本の論文に加え、新たな論文を2、3本執筆して、年度内に査読あり・なし合わせて、5、6本の論文を発表する予定である。研究調査自体は昨年度までにほぼできているので、不可能ではない計画である。 ただし、資料の最終確認も兼ねて、過去2年の夏の半分程度の10日~2週間ロンドンに稀覯本調査に赴くことができればと考えている。
|
次年度の研究費の使用計画 |
購入する資料の収集については必要なものがかなり揃ったため、書籍の購入代金が減少した。また、印刷用インクや紙も2年目に購入したもので事足りたため購入する必要がなかった。「その他」も予定したように大量のコピーを取ることがなく、振込手数料のみとなっている。他方、過去2年間の夏の海外調査旅費が円安の進行などもあり、当初の計画以上に大きくかかったため、計画2年目と3年目共に4~5週間ずつと考えていた調査が3週間ずつしか行えなかった。そこで、計画最終年度も短期間だけでも海外調査に行ければと考え、旅費用に約16万円を繰り越した次第である。 当初計画では最終年度は物品費20万、旅費15万、その他15万であった。最終年度は論文執筆を中心に作業する予定ではあるが、資料の最終確認も兼ねて10日~2週間ほどだけでもロンドンに稀覯本調査に行ければと考え、旅費に次年度使用額とその他の一部を合わせ、約40万ほどを旅費とし、残りを書籍やインク・紙代を中心とした物品費としたい。
|