研究課題/領域番号 |
23720184
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
呉 世宗 琉球大学, 法文学部, 講師 (90588237)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 植民地 / 日本語文学 / 朝鮮 / 難民 |
研究概要 |
本研究は、植民地期に多く生まれた朝鮮人文学者達の日本語文学作品を、「難民」たちの文学活動という観点から考察するものである。すなわち、(1)植民地的観点から従来の難民概念を拡張し、(2)その難民概念に照らしながら日本語を母語としない者たちの文学活動及び作品の意味を問い直すことを目的としている。つまり準「日本人」的立場であった朝鮮人文学者と、彼らが生み出した準「日本語」的な作品を、「難民」概念を用いて、「難民」たちの文学活動という枠組みで分析することを本研究は目的としている。 2011年度は、以上の目的のもと、論文「植民地朝鮮「暗黒期」の〈日本語文学〉の再検討のために――対形象化と植民地的主体について」を『琉球アジア社会文化研究』第14号(2011.10)に発表した。そこでは、植民地期の日本語文学が現在韓国においてどのように検討されているのかを概観しながら、近年始まった植民地期の文学作品の再検討の先駆的な仕事である、鄭百秀『韓国近代の植民地体験と二重言語文学』(2000)を中心的に取り上げて検討した。とりわけ「対形象化」と「植民地的主体」という用語を中心に分析を行った。 また11月には東京大学「共生のための国際哲学教育研究センター」(UTCP)主催のワークショップにて「「暗黒期」の〈日本語文学〉を再考する―予感することをめぐって」というタイトルで研究報告を行った。そこでは、植民地期に日本に渡り日本語と朝鮮語で文学活動を行った詩人・許南麒の日本語詩を中心的に取り上げ、経験と予感という観点からその作品の特徴について検討をした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、植民地期に多く生まれた朝鮮人文学者達の日本語文学作品を、(1)植民地的観点から従来の難民概念を拡張し、(2)その難民概念に照らしながら日本語を母語としない者たちの文学活動及び作品の意味を問い直すことを目的としている。この目的に対して、上述した個人的な研究会での発表、論文執筆、および東京大学UTCPでのワークショップでの研究報告などを通じて「難民」概念の検討および日本語文学作品の分析を進めており、おおむね研究目的・計画を順調に進展させていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
2012年度は、前年度の成果を踏まえ、より広く植民地期の日本語文学作品についての先行研究の検討と問題点の抽出、そして植民地末期の朝鮮人たちの日本語文学作品の批判的検討を行う予定である。文学作品の分析を行う際は、単行本として出版されたものだけでなく『国民文学』、『東洋之光』、『国民詩歌』といった雑誌や、『朝鮮文学選集』(1940)、『朝鮮小説代表作集』(1940)、『朝鮮国民文学集』(1943)等のアンソロジーといったものも含め、できる限り広く資料を収集する予定である。その収集した資料を基に分析を進めていくわけであるが、研究を進めるに際しては、前年度と同様に研究会やワークショップなどを開催しながら行っていく予定である。最終的には論文としてまとめ、発表する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
2012年度の研究費は、主に植民地の日本語文学に関する図書の購入費・複写費として使用する。また、研究会や資料収集するために行う、沖縄から日本国内各地への移動の費用としても研究費を利用する予定である。また夏季休暇を利用して資料収集のために韓国へ行く予定であるが、研究費は韓国への渡航費としても使用する予定である。
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