研究課題/領域番号 |
23720187
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
河野 至恩 上智大学, 国際教養学部, 准教授 (60439338)
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キーワード | 比較文学 / 日本文学 / 翻訳論 / 海外の日本文学受容 / 文化交渉史 / 国際研究者交流 / アメリカ合衆国:ドイツ:オランダ |
研究概要 |
明治・大正・昭和戦前期の日本近代文学の翻訳書の調査として、ドイツ(ベルリン国立図書館)、オランダ(ライデン大学図書館)、デンマーク(デンマーク王立図書館、同民俗学コレクション、コペンハーゲン大学図書館)、スウェーデン(スウェーデン国立図書館、東アジア図書館)において、翻訳書の書物の調査(書入れなど)、書誌作成、同時代の書評の調査および収集を行った。ドイツ(ベルリン)、オランダでは、ドイツ語圏の日本文学の翻訳状況、その日本学との関連について資料を収集し、調査を進めることができた。また、デンマーク、スウェーデンでは、同時代の書評や、戦前の日本学・民俗学における日本文学翻訳の広がりについて調査した。書誌作成は、特にドイツ語で新しい翻訳書の書誌を利用しながら進めることができた。 日本近代文学の翻訳をめぐる国内外の人的ネットワークの調査として、富山大学附属図書館所蔵・中土文庫(北星堂書店初代店主の中土義敬氏蔵書および北星堂書店出版資料)の調査を行った。北星堂が昭和戦前期に出版していたニュースレターPole Star Monthlyを調べ、北星堂の英訳書籍の反響、英訳出版書の出版の経緯について調査した。また、北星堂の大正・昭和戦前期の英訳出版全体について調査を進めた。さらに、中土義敬氏の親族で中土文庫の整理を進めている千田篤氏に、中土氏、北星堂書店についてのインタビューを行うことができた。前年度の調査に加え、北星堂が大正から昭和戦前期にかけて日本文学の英文翻訳・普及に果たした重要な役割について明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
明治・大正・昭和戦前期の日本文学の翻訳と日本学の形成の関係、日本近代文学の翻訳出版状況について、貴重な資料が集まり、新たな発見も多くあった。また、現地の研究者から、調査の進め方、現在の文学研究の動向のなかでこの資料をどう位置づけるかについて、様々なアドバイスを受けた。予定していた調査のうち、英国への調査は行うことができなかったが、来年度に実現できるよう計画している。また、研究成果については、来年度に向けて論文や口頭発表にまとめていく予定である。 研究成果の発表として、口頭発表(「森鴎外と世界文学」2013年2月、ベルリン・フンボルト大学)を行うことができた。 書誌作成については、来年度の公開に向け進めている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年となる平成25年度は、研究成果の発表を進めていく予定である。特に、近代日本文学の翻訳について、ワークショップまたはシンポジウム(上智大学比較文化研究所との共催を予定)を企画中である。また、大正・昭和戦前期の日本文学翻訳のネットワークについて、論文にまとめ、発表することを目指す。 明治・大正期の日本近代文学の翻訳書の出版状況について、書誌を年度内に発表できるよう、国内外で追加調査を行い、資料収集を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
○成果発表のためのワークショップ、シンポジウムを行ううえでの海外・国内からの講師招聘。その他経費。 ○ヨーロッパ・北米への旅費・滞在費。ハワイ大学の日本学と日本文学翻訳についての追加調査。ヨーロッパでの翻訳状況についての追加調査。(英国・ドイツ) ○日本国内旅費…富山大学など国内の資料調査、および研究打ち合わせ。 ○日本近代文学の欧米語翻訳書、研究書の購入。 ○研究補助(スペイン語圏の調査を予定)、翻訳経費の人件費。 ○その他資料調査のためのコピー、消耗品等。
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