明治期から昭和戦前期における日本近代文学の欧米語への翻訳状況を総合的に分析し、当時日本文学の翻訳出版に関わった翻訳者や出版社などについて調査した。その結果、この時代の日本近代文学の翻訳の大きな動向のひとつとして、日本研究との深い関連があることを示した。例えば、二葉亭四迷『其面影』を英訳(共訳)した グレッグ・シンクレアについて、1930年代にハワイ大学で東洋学研究所の設立に関わるなど、当時の日本研究の展開に深く関わっていることが明らかになった。また、森鴎外の小説『百物語』(1911)における鴎外の「世界文学」意識を、当時の鴎外作品の翻訳状況に照らして明らかにすることができた。
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