研究課題/領域番号 |
23720188
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研究機関 | 大東文化大学 |
研究代表者 |
中垣 恒太郎 大東文化大学, 経済学部, 准教授 (80350396)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 国際情報交流(アメリカ) / 初期映画 / ドキュメンタリー / 国家形成期 / ナショナリズム / メディア・リテラシー / モキュメンタリー / 虚構 |
研究概要 |
アメリカ初期映画において「ドキュメンタリー」とされるジャンルがいかにしてリアリティを創出し、形成・発展されてきたのかを探る。世紀転換期は異文化に対する異国情緒としての強い関心が窺えると同時に、ナショナリズム、国家意識に対する意識の高まりも示されていた。映画技術を含むテクノロジーの変革期であり、アメリカが国力を増していく只中であり、新旧の価値観が混在する混沌の時代に相当する世紀転換期の中で、20世紀アメリカ大衆文化のエッセンスがどのようにして生成していったのか。同時代の時代思潮・光景を映像表現を用いていかに「記録」することができたのか。その手法と異国情緒などのイデオロギーの問題にまつわる考察を試みる。 「ドキュメンタリー(記録)映画の父」と称されるロバート・フラハティの代表作『極北のナヌーク』(1922)は、イヌイットの一家の生活を追ったものであり、家族と共に現地に住み着いて撮影を行う手法をとったことにより、後世のドキュメンタリー作家に多大な影響を及ぼしているが、カメラ撮影のために特別に作られた家で撮影を行うなど、様々に演出がほどこされていたことはあまりにもよく知られている。今日の「メディア・リテラシー」をめぐる議論においても、情報の受け手がいかに受け取った情報を取捨選択していくことができるかという問題に焦点が当てられるが、「本物らしさ」を演出によって追求する映像文化の発達と共に、ドキュメンタリーというジャンルの見方に対する約束事もまた形成されてきたわけである。 本研究課題は、最新のドキュメンタリー表現について検討してきた、これまでの研究活動を活かしながら、アメリカ初期映画に遡り、ドキュメンタリーとされるジャンルがいかにして形成・発展されてきたのかを、今日のドキュメンタリー表現に対する接続・連関を意識しながら再検討することを主たる目的とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究計画として以下の目的を掲げた。 一つ目の柱として、初期アメリカ映画にまつわる「リサーチ(フィールドワーク含む)/アーカイブ構築」である。初期アメリカ映画研究にまつわる研究機関(Edison Museumやアメリカ議会図書館)、研究学会(Society for Cinema and Media Studies Conference、Popular Culture Association)などを訪問・参会(研究発表)することにより、一次資料(映像含む)および研究成果の聞き取り調査を実施する。また、当研究領域をめぐる近年の大きな変化として、かつてはフィルムの形でしか収集保存できなかったものが、DVDやインターネットなどを通して資料へのアクセスが容易になってきているものがある。初期アメリカ映画という分野の性質上、廉価版という形ではなく、研究機関での所属を想定した価格設定であることが多いが、収集可能な状態である初期アメリカ映画映像資料のアーカイブ構築を目指す。 この目標を踏まえた上で、日本映像学会などにおける研究発表の機会などを得ることによって、ここまでの段階ではおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
進行中の研究成果について、各種学会での研究発表、パネル・セッションの開催などの形を通して、成果発表の場を積極的に持ちたい。プロジェクト期間終了後に出版企画立案を構想していることからも、本研究期間中にできるだけ多く研究成果を世に問い、フロアとの討議を経ることにより、研究成果の進展を促す。日本映像学会、日本映画学会、日本アメリカ学会、表象文化論学会など、Kinema Club[日本映画研究学会]、Society for Cinema and Media Studies Conference、Cultural Typhoon、Popular Culture Associationなどの学会を想定している。 さらに出版企画(単著、共著)として、本研究課題の成果の一端を披露すべく準備を進めている段階にある。
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次年度の研究費の使用計画 |
引き続き、初期アメリカ映画研究にまつわる研究機関(Edison Museumやアメリカ議会図書館)、研究学会(Society for Cinema and Media Studies Conference、Popular Culture Association)などを訪問・参会(研究発表)することにより、一次資料(映像含む)および研究成果の聞き取り調査を実施する。また、当研究領域をめぐる近年の大きな変化として、かつてはフィルムの形でしか収集保存できなかったものが、DVDやインターネットなどを通して資料へのアクセスが容易になってきているものがある。初期アメリカ映画という分野の性質上、廉価版という形ではなく、研究機関での所属を想定した価格設定であることが多いが、収集可能な状態である初期アメリカ映画映像資料のアーカイブ構築を目指す。 また出版企画や成果報告のために、英文校閲費や雑誌掲載料、出版負担金なども予算として見込んでいる。
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