研究課題/領域番号 |
23720188
|
研究機関 | 大東文化大学 |
研究代表者 |
中垣 恒太郎 大東文化大学, 経済学部, 准教授 (80350396)
|
キーワード | 国際情報交換(アメリカ) / ドキュメンタリー / 初期アメリカ映画 / ナショナリズム / テクノロジー / 異国情緒 / 世紀転換期 / 災害表象 |
研究概要 |
アメリカ初期映画において「ドキュメンタリー」とされるジャンルがいかにしてリアリティを創出し、形成・発展されてきたのかを探る。世紀転換期は異文化に対する異国情緒としての強い関心が窺えると同時に、ナショナリズム、国家意識に対する意識の高まりも示されていた。映画技術を含むテクノロジーの変革期であり、アメリカが国力を増していく只中であり、新旧の価値観が混在する混沌の時代に相当する世紀転換期の中で、20世紀アメリカ大衆文化のエッセンスがどのようにして生成していったのか。同時代の時代思潮・光景を映像表現を用いていかに「記録」することができたのか。その手法と異国情緒などのイデオロギーの問題にまつわる考察を試みる。 本研究課題に関する研究成果として、第25回エコクリティシズム研究会全国大会シンポジア「災害・メディア・文学」にて、「災害SF映画の系譜――アメリカ・終末思想・都市文明論」(2012年8月8日、於・松山大学)として、「アメリカ消防夫の生活」(1902)をはじめとする火事/災害表象の系譜を、ドキュメンタリー/物語映画の生成過程に注目しつつ考察した。とりわけ311後の世界に生きる私たちの視点を通して、エコクリティシズムの研究方法を導入することにより、アメリカ初期映画を捉えなおす試みは手ごたえを感じることができるものであった。 また、「Mark Twain on the Move――19世紀アメリカ文化における移動・交通・巡礼」「アメリカ文学における『ロード』の物語学」(2012年3月28日、於・日本女子大学文学部学術交流企画公開ワークショップ)では、文学および映像メディアを含む19世紀転換期のアメリカ文化を、移動・交通の観点からその系譜を探ることを目指した。 共に論文としての成果報告を予定している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
『ハリウッド映画を通して探るアメリカ文化・社会・歴史』(大学教育出版、近刊)『エコクリティシズムで読み解く日米大衆文化――ポスト工業化社会における核・ジャンク・廃墟の想像力』の2冊の単著に本研究課題の成果をまとめる構想をもっており、どちらも全体像が大きいこともあり、2冊とも成果を仕上げるのに時間がかかっているためである。前者は本研究課題の対象となるアメリカ初期映画を出発点としてアメリカ映画文化全般を捉えようとする試みであり、後者はアメリカ初期映画から現在のハリウッド映画までを通底する災害映画の系譜を軸としている。 少なくともこの2冊の原稿を本研究成果期間中に仕上げることを当面の目標としており、並行して、各種学会での研究発表を通じて成果報告の機会をもちたい。
|
今後の研究の推進方策 |
『ハリウッド映画を通して探るアメリカ文化・社会・歴史』(大学教育出版、近刊)『エコクリティシズムで読み解く日米大衆文化――ポスト工業化社会における核・ジャンク・廃墟の想像力』の2冊の単著執筆を継続する。 さらに日本映像学会での研究発表などを通して研究成果の一端を発表する機会を持ち、論文・研究書の成果に活かしていきたい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
海外での研究成果発表およびアメリカの大学を含む研究機関への訪問調査。英語による成果発表の準備となる英文校閲費、最新の研究動向を掌握するための研究書籍購入などを予定している。
|