アメリカ初期映画において「ドキュメンタリー」とされるジャンルがいかにしてリアリティを創出し、形成・発展されてきたのかを探る。世紀転換期は異文化に対する異国情緒としての強い関心が窺えると同時に、ナショナリズム、国家意識に対する意識の高まりも示されていた。映画技術を含むテクノロジーの変革期であり、アメリカが国力を増していく只中であり、新旧の価値観が混在する混沌の時代に相当する世紀転換期の中で、20世紀アメリカ大衆文化のエッセンスがどのようにして生成していったのか。同時代の時代思潮・光景を映像表現を用いていかに「記録」することができたのか。その手法と異国情緒などのイデオロギーの問題にまつわる考察を試みることを目指した。 具体的な研究実績としては、第39回日本映像学会での研究発表「エッサネイ期(1915-16)のチャップリン――「放浪者」像の生成とアメリカ文化」2013年6月2日(於・東京造形大学)、日本英文学会第8回関東支部大会英米文学部門シンポジウム「workと20世紀転換期の英米文学」での研究報告「アメリカ大衆文化における『ホーボー』イメージの想像力」2013年11月2日(於・日本女子大学)を通して、初期アメリカ映画および20世紀初頭のアメリカ文化における「放浪者像」の変遷を探る分析を行い、映画史の発展と時代思潮について考察した。 さらに米国ポピュラー・カルチャー学会(Popular Culture Association) における研究発表、“How Can Documentary Filmmakers Face Natural Disasters? Representations of 311 and Japanese Filmmakers’ Challenges.” 2014年4月19日(於・シカゴ・マリオットホテル)を通して、21世紀の「311表象」から遡り、映画の発展史における災害表象の変遷に関する考察を試みた。
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