本研究は、日本統治下にあった戦前の台南における文学活動を、日本語文学を中心に、いかに都市台南を表象したかという視点から研究するものである。台湾の古都台南は、佐藤春夫が1925年に発表した「女誡扇綺譚」以来、日本語による文学表象の対象となり、西川満「赤嵌記」や庄司総一『陳夫人』、新垣宏一「砂塵」などが続々と書かれ、台湾人の詩人呉新榮や楊熾昌も活躍し、また前嶋信次や國分直一による歴史学・民族学研究の対象ともなった。本研究では、文学による台南表象を、当時の歴史的な文脈と照らし合わせつつ研究し、同時にこの作業を通して、周辺からの文学史の再考を試みた。
|