研究課題/領域番号 |
23720193
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
金 情浩 東北大学, 文学研究科, 助教 (70513852)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | かき混ぜ語順文 / 文処理 / fMRI / 階層構造 / 線形順序 |
研究概要 |
1980年代に日本語の「かき混ぜ文(OSV語順文)」が英語に見られる疑問詞の文頭への移動(WH移動)や話題化(topicalization)などのように、名詞句が意味役割上の解釈を受ける位置と異なる位置で発音される現象と同様に移動の一種であるかどうかが理論上の争点となって以来、失語症の研究から「かき混ぜ」が移動の一種であるとする分析を支持する証拠が多数見つかった。ブローカ失語の一種である失文法失語になるとWH移動を含む文と同様に、かき混ぜを含む文の理解に対しても選択的困難を示すことが実証されたのである(Hagiwara & Caplan 1990など)。このように、日本語文の「かき混ぜ」が移動の一種であるとする分析は、理論言語学と神経言語学(失語症研究)双方の観点から支持されている。また、近年では、移動のような統語操作を始め、文理解(処理)に影響を及ぼす要因とされる意味役割や有生性などの階層構造、あるいは線形順序(linear order)がブローカ野の脳活動と相関を示すことがfMRI研究で報告された(Grewe et al., 2005; Grewe et al., 2006)。しかし、そのほとんどの研究が英語やドイツ語、日本語を刺激文としており、上記の意味役割や有生性などの線形順序が韓国語の文理解(処理)に与える影響について脳機能画像法(fMRI)を指標として調査した研究はほとんどないのが現状である。そこで、本研究では、(1)文法的要因(主語、目的語などの語順)と非文法的認知的要因(名詞の有生性の線形順序)が韓国語他動詞文の文理解(処理)に与える影響と、(2)敏感期以降に韓国語を学習しようとする日本語母語話者を対象に、韓国語学習レベルの変化が脳内処理に与える影響を、行動実験を指標として研究を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度の予定は、(1)聴覚実験用の刺激文の候補を、文字を用いて作成(2)アンケート調査の実施(3)予備実験および韓国語母語話者のfMRI測定で、fMRI測定以外のところは計画通りに達成できた。韓国語母語話者のfMRI測定に遅れが生じたのは、刺激文作成の段階で特に、<無生名詞+有生名詞+動詞>の組み合わせの刺激文作成に時間がかかったことによるもので、次年度のできるだけ早い時期に実施予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度(2年目)は、昨年度の行動データの結果を踏まえ、韓国語母語話者のfMRI実験を実施する。fMRI実験データの分析が終わり次第、日本語母語話者のfMRI実験(1回目)を実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
行動データの結果公表のために旅費(40万)と被験者への謝金(60万)に使用予定である。繰り越し分の20,893円も謝金に使用する予定である。
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