研究課題/領域番号 |
23720193
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
金 情浩 東北大学, 文学研究科, 専門研究員 (70513852)
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キーワード | 語順 / 文処理 / 認知脳科学 |
研究概要 |
韓国語は日本語、トルコ語、ハンガリー語と同様、類型論的には膠着語に属し、前置詞ではなく後置詞を用いる言語性質を持つ。また、統語的にはSOV(主語・目的語・動詞)を「基本語順(canonical word order)」とするが、OSV(目的語・主語・動詞)という「かきまぜ語順(scrambled word order)」も可能である。生成文法理論では、何らかの理由で目的語が主語を超えて文頭に位置する、かきまぜ語順文のほうが基本語順文よりも複雑な統語構造(依存関係、filler-gap dependency)を持つと考えられている。しかし、これまでの研究は日本語を対象にしたものが多く、韓国語他動詞文の2つの語順と文理解(文処理)との言語メカニズムを解明するための試みは少ないのが現状である。そこで、それを究明するための第一歩として、韓国語のかき混ぜ語順文による<かき混ぜ効果>と<プライミング効果>の有無について検証した。心理実験の結果、「基本語順文とかき混ぜ語順文の統語的な構造の違いが文理解(処理)に反映されるなら、かき混ぜ語順文のほうが読み時間が長く、痕跡によるプライミング効果も見られる(反応時間:SOV < OSV、プライミング効果:SOV < OSV)」という予測を支持する結果となった。また、今回の実験結果から、少なくとも韓国語かきまぜ語順文では、痕跡によるかきまぜ効果(基本語順文<かき混ぜ語順文)と探査語によるプライミング効果(基本語順文<かき混ぜ語順文)の両方を確認できた。この結果は、韓国語かき混ぜ語順文も日本語と同様、空所補充解析による文処理(文理解)が行われることを示すものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
日本語母語話者の韓国語成績が思うように伸びなかったことが原因で、fMRI実験スケジュールが全体的にやや遅れている。5月と6月にかけて集中的に韓国語学習指導を行うことで遅れを取り戻す予定である。
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今後の研究の推進方策 |
23年度と24年度の研究成果に基づき、韓国語母語話者と日本人母語話者のfMRI実験を実施する。また、日本語母語話者に関しては、fMRI実験の前に参加者の韓国語レベルの確認のための学力テストを行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究成果の発表とデータ収集のための旅費と被験者への謝金に使用予定である。繰り越し分の298,818円は謝金に充てる予定である。
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