韓国語他動詞文のかき混ぜ語順効果とプライミング効果を確かめるため、行動実験とfMRI実験を実施した。 【実験1】プライミングの効果による検証 実験の結果、P7(動詞部分)でかき混ぜ語順文のほうの反応時間が基本語順文のそれに比べ、有意に長い結果となった。また、探査語の再認時間は、痕跡を含むかき混ぜ語順文のほうが基本語順文より有意に短い結果となった。これらの結果は、日本語だけではなく韓国語のかき混ぜ語順文も空所補充解析(gap-filling parsing)による文処理(文理解)が行われることを示唆するものでもある。 【実験2】fMRI実験による検証 基本語順文あるいはかき混ぜ語順文に固有に関わる脳活動領域を特定するために、「基本語順文条件 vs. かき混ぜ語順文条件」と「かき混ぜ語順文条件 vs. 基本語順文条件」の直接比較を行った。その結果、後者の比較では左脳の下前頭回と中前頭回に賦活が見られた。ブローカ野を含む下前頭回は、これまでの認知脳科学の研究から言語理解に深くかかわる領域であると考えられている。本実験の結果は、日本語母語話者を対象に行われたKim et al.(2009)の研究結果とも整合性を示しており、韓国語のかき混ぜ語順文は、空所と埋語の依存関係を持つという点で、基本語順文に比べて統語構造がより複雑で処理負荷が高いという理論言語学や心理言語学の見解を支持するものである。
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