研究課題/領域番号 |
23720195
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
西田 文信 秋田大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (40364905)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ブータン王国 / チベット・ビルマ諸語 / マンデビ語 / 形態統語論 / 記述言語学 |
研究概要 |
本研究は、研究代表者がこれまで行ってきたマンデビ語(Mangdebikha : シナ=チベット語族、チベット=ビルマ語派、ヒマラヤ語支、チベット=キナウリ語群、東チベット諸語、Nyenkha、Henkha、Lap、Mangsdekhaとも称される)の記述研究を継続して行うものである。本年度は、関連文献の収集及び現地調査を中心に行った。関連文献については、日本邦文・欧文を問わず歴史的関係、人類学関連の文献については収集を行った。現地調査に関しては、ブータン王国において話される少数民族言語について、現地調査を中心とした資料収集を行い、記述言語学的研究を進めた。ブータン渡航時にはゾンカ語開発委員会などブータン国内の関係部署への訪問を行った。現地調査は2012年3月6日から3月27日日にかけて、ブータン王国トンサ県においておこなった。主たる研究対象であるマンデビ語ツァンカ方言について動詞の統語的振る舞い等の文法調査や自然発話の音声資料を収集した。研究発表は、神戸市外国国語大学で開催されたThe 17th Himalayan Languages Symposiumにて「The Mangde orthography」と題して正書法について論じ、秋田英語・英文学会にて「Sino-Tibetan languages and gender issues」と題してジェンダーについて報告した。また、ジュネーブのブータン大使館でマンデビ語についての講演を行った。論文としては、マンデビ語の概説論文である'Mangde in Bhutan.'、また学会報告として 'Conference report: The 5th Medieval Tibeto-Burman Languages Symposium and The 16th Himalayan Languages Symposium.'を執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の点に関して達成できたと考える:[a]既に刊行された周辺諸言語の調査記録の蒐集と整備に関しては、Brill社から刊行されているLanguages of teh Greater Himalayan Regionを整備し、言語学及び人類学の学術誌に発表されたブータン関連文献を収集し、またゾンカ語開発委員会刊行の文献を収集した。[b]現地調査(フィールドワーク)に関しては、現地調査による録音資料やテキストなどの言語情報を収集し、ゾンカ語開発委員会との研究協力を強化した。[c]資料の整理、分析、記述に関しては、現地調査による録音資料やテキストなどの言語情報を整理し、歴史・社会言語学的方法論の検討をした。[d]成果(語彙集・文法)の公刊とデータベース化に関しては、語彙資料・文法資料・談話資料を含む文法書を執筆中である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も夏季または春季に現地調査を行い、言語データの収集を継続するし、これまでに発表した論文の内容のチェックおよび、新たな文法項目の収集と分析を行う。具体的には、マンデビ語の系統、類型的特徴、言語使用状況にはじまり、音韻や文法体系の記述、親族名称、色彩語彙などの特殊な語彙にわたるものである。また、談話資料を収集する必要性から、民話の収集も行う。これは、格標識が談話の中で果たす役割や、格標識の省略などを分析する上で必要な資料であると考えたためであり、今後も分析を継続する予定である。研究成果は、「チベット=ビルマ諸語研究会(京都大学)」、「国際シナ=チベット言語学会」、「ヒマラヤ諸語シンポジウム」にて報告し、シナ=チベット諸語に関心をもつ方々に広く公表し、批判を仰ぐ予定である。またブータン在住のインフォーマントにも継続して研究遂行上の協力を仰ぎ、本研究の充実を図ることとする。その成果については、インターネット上の手段を通じ、適宜意見の交換を実施していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
国内の学会(日本言語学会・日本歴史言語学会)及び研究会(チベット=ビルマ諸語研究会)への参加のための国内旅費、及びブータン王国トンサ県及びワンディポジャン県における現地調査にかかる海外旅費に当てる。ブータン王国における現地調査は、政府規定の公定料金(単独調査の場合一日240米ドル)を必要とするため、旅費の占める割合が高くなっている。但し、この公定料金にはが含まれている。それゆえ、本研究内容を踏まえると、次年度研究費を旅費に当てることは妥当、且つ必要であり、積算根拠も妥当であると考える。
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