本研究では、言語コーパスによる人間の判断が確率的な規則から逸脱する現象の予測システムを構築することを目的とする。本研究で対象とするのは、確率規則からの逸脱現象である連言錯誤とし、以下の2つのステップでシステムを構築する。 I.利用する確証度の選定:各現象に対して、大量言語コーパスを用いて確証度を計算する。もっとも人間の意思決定を予測可能な確証度を割り出すため、確証度と心理実験結果を比較しする。 II.人間の判断が確率的な規則から逸脱する現象の予測システムの構築:対象となる文章を入力すると、その中から単語をピックアップし、その単語の組み合わせについて、それぞれの現象が起こる可能性を言語コーパスを用いた確証度計算によって予測する。 連言錯誤に対する研究では、まず、心理実験を行った。先行研究から、連言錯誤の問題文を抽出し課題とした。また、本研究で構築した言語コーパスデータベースを使用し、単語の出現頻度、共起頻度を計算した。その頻度情報から、確証度を計算し、心理実験の結果と比較した。その結果、Crupi et al.(2007)が提案している確証度Zを言語コーパスデータベースを利用して計算した値と連言錯誤が起こる割合の間に有意な正の相関が見られた。この確証度Zに関しては、お互いの事象の確率の差異が小さい場合、大きい方の確率の事象の評価が大幅に更新される特徴を持っている。このような特徴が人間の確率規則からの逸脱現象の原因となっている可能性が示される結果となった。 言語コーパスデータベースと確証度Zを使用して、人間の判断が確率的な規則から逸脱する現象の予測システムの構築を行った。このシステムでは、分析対象となる単語を3つ入力する。その入力した分析対象語について、言語コーパスデータベースから確証度Zを計算する。計算された確証度の差が、どの程度確率的な規則から逸脱しやすいのかという値として提示されるものとなっている。
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