研究課題/領域番号 |
23720206
|
研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
小林 昌博 鳥取大学, 大学教育支援機構, 准教授 (50361150)
|
キーワード | 統語論 / 意味論 / 形式言語学 |
研究概要 |
24年度は、前年度に行ったゲンツェン流の証明論として言語学に応用されているシークエント計算の体系について、部分構造論理へ交換規則と縮約規則、割増規則を付与する場合の、その制限に関する検討を行った。具体的な言語学的な現象として、日本語の「名詞句+の+名詞」という環境において「名詞」が省略されるN’削除を取り上げた。本研究では、N’の要素が削除されている文を解析するために、「名詞句+の」が主語や目的語としての意味機能を持つ場合と修飾表現として機能する場合とで助詞の「の」に複数の語彙情報を与え、さらにランベック計算のシステム上で交換規則と縮約規則、および割増規則と結合規則を特定の環境でのみ適用するために規則適用の「モード」を導入するマルチ・モーダル範疇文法の枠組みを提案した。また、本研究では、モーダル演算子を用いた構造規則とシークエント計算上での削除規則に結合モードを導入した規則を提案している。本研究の成果はKobayashi(2012)に掲載されている。 さらに、Kobayashi(2012)で提案された枠組みと量化詞のスコープの処理の可能性を探った。量化詞や削除現象だけでなく、他の語順及びスコープに関する現象へとデータの幅を広げている。また、現在、本研究の枠組みをprologやcoqを用いて計算機上へ実装している。コンピュータでシミュレーションができるようになると、応用・発展の可能性が増し、データを使った検証をある程度自動化できることにより理論自体へのフィードバックが増えることも期待できる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、論理学の証明理論や型理論に基づき、量化詞のスコープや省略、語順等に関する諸問題を説明する形式言語モデルを提示することにある。初年度は、基礎となる論理学の各手法に関する理解を深めた。本年度は、日本語のN'削除現象を取り上げ、部分構造論理と構造規則の適用を制御するモードを提案した。これらの成果は次年度における、コンピュータを使った理論の実証や説明データの拡張などへとつながると思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
25年度は、研究成果のまとめ、総括をしながら、前年度までの理論的基盤を洗練させる予定である。また、チョムスキー階層と部分構造論理の拡張体系との関連や自然言語との関連も研究する。特に理論的成果は計算機上で実装し、将来的な応用の可能性を探り、理論へのフィードバックも図る予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
24年度はわずかな額ではあるが、研究費を次年度に繰り越した。25年度は、いくつかの学会に出席予定であるため、その旅費や宿泊費として使用を予定している。また、関連分野の書籍を購入する予定である。
|