研究課題/領域番号 |
23720209
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研究機関 | 神戸市外国語大学 |
研究代表者 |
林 範彦 神戸市外国語大学, 外国語学部, 准教授 (40453146)
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キーワード | 言語学 / 記述言語学 / 東南アジア地域言語学 / 言語接触 / 中国雲南省 / チベット・ビルマ諸語 / ラオス / ミャンマー |
研究概要 |
今年度の研究実績としては以下の3点にまとめられる。 (1) 現地調査:2012年の9月と2013年3月には中国雲南省シプソンパンナー州へチノ語悠楽方言とゲランホ・アカ語の現地調査を行い、前者については自然発話の録音データ採集と書き起こしデータ1000例、後者については文例600例とテキスト2編の採録を行った。 (2) 学会発表: 2012年5月にThe 22nd Southeast Asian Linguistic Society(Agay, France)にて、6月に日本言語学会第144回大会(東京外国語大学)にて、10月にThe 45th International Conference on Sino-Tibetan Languages and Linguistics(Nanyang Technological University, Singapore)にて、 11月にThe 6th International Conference on Yi-Burmese Languages and Linguistics(Southwest Nationalities University, Chengdu, China)にて口頭発表した。 (3) 論文公刊: 「基諾語補遠話音系簡介」“Existential Verbs in Youle Jino.” “A Sketch of Buyuan Jino Tones and Their Development.”と題した論文を研究論集にて公刊した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2012年度は日中関係の政治的問題が噴出した年であり、日本人の調査が非常に難しかった。そのため、調査としては長年継続して行なっているチノ語悠楽方言と、新しく調査を開始しているゲランホ・アカ語の2言語のみとなった。その部分でチノ語補遠方言とラフ語南郎河方言の調査が予定より進んではいないが、一方でゲランホ・アカ語の文法調査は予定より早く進んでおり、順調であると言える。 また文法研究では形態統語論的な分析を着実に進めており、チノ語補遠方言の格標識の体系とゲランホ・アカ語の音韻体系についてはすでに国際会議で発表を行った。これらについては論文執筆を予定している。 チノ語補遠方言とゲランホ・アカ語の語彙データベースについてはやや遅れが出ているが、基礎語彙データはすでに収集したので、順次入力が可能となっている。
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今後の研究の推進方策 |
2013年度は最終年度となるため、これまでの研究の総括として、採集データのより精緻な分析と課題発見、そして分析済みデータの公開と成果発表を中心に行いたい。すでに5月に行われるSoutheast Asian Linguistic Society(チュラロンコン大学、タイ)でチノ語悠楽方言の借用語の問題について、8月に行われるLFK Linguistic Meeting (ワシントン大学、米国)でチノ語方言の摩擦音の来源について発表を予定している。また9月に行われるHimalayan Languages Symposium (オーストラリア国立大学)でゲランホ・アカ語の格標識の問題について発表を検討している。2012年度の口頭発表を行ったものについては2013年度で論文執筆を計画している。 また日中関係を見据えながらとなるが、短期間の補充調査を行い、チノ語補遠方言・ゲランホ・アカ語・ラフ語南郎河方言のデータの採集を継続したいと考えている。チノ語補遠方言については引き続き文法体系の項目について、ゲランホ・アカ語は自然発話のデータ、ラフ語南郎河方言については基礎的文法項目を中心に調査を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度となる2013年度は最終年度にあたり、(1)補充調査と(2)学会発表、(3)論文の英文校正などが研究費の主要な費目となる。 (1) 夏季あるいは冬季に1回、中国雲南省シーサンパンナ州へチノ語補遠方言およびゲランホ・アカ語の補充調査を実施したいと考えている。 (2) タイ・チュラロンコン大学で開かれるSoutheast Asian Linguistic Societyとオーストラリア国立大学で開かれるHimalayan Language Symposiumでチノ語悠楽方言とゲランホ・アカ語の研究発表を行なう予定である。 (3) ゲランホ・アカ語の音韻論に関する論文と、チノ語補遠方言の格標示に関する論文をそれぞれ中国語と英語で発表する予定だが、その英文校正費用に当てたいと考えている。
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