研究課題
今年度は研究の総括と論文執筆を中心に活動した.夏期にパプアニューギニアでフィールドワークを実施し,アメレ語の時間表現,時制形について過去のデータをチェックし,さらに新たなデータや例を収集した.1980年代に出版されたアメレ語の記述文法書の記録とはかなり異なる用法が観察された.時間表現については,トクピシン経由で多くの英語語彙が使用されるようになった点が特徴的である.時制形については,記述文法ではとりわけ過去形の用法が,今日の過去,昨日の過去,離れた過去と豊富な形態的過去時制を有していると記されていた.しかし,調査の結果,時制形が衰退しており,現在であっても過去であってもひとつの形式しか使用しないことが判明した.この衰退に関しては,方言的相違なのか,言語変化によるものかを今後も慎重に観察する必要がある.加えて,アメレ語に隣接するオーストロネシア系のベル語の話者から,聞き取り調査を実施した.ベル語ではアメレ語の影響か,時制形の形態が存在することが確認できた.さらに,時間表現に関してはやはりトクピシンの語彙が観察されるとともに,アメレ語とも共通部分が存在することが判明した.これについても,50年以上前の宣教師が書いたベル語の文法書とは,大きく異なっているようであり,引き続き詳細な調査と文法記述が必要である.他方,研究計画で計画していたカルカル島や他のマダン州地域での現地語調査は,現地治安の悪化のため,断念せざるをえなかった.研究発表においては,社会言語科学会で一部の成果を発表し,さらに国際学会にひとつ採択されている.
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Proceedings of the International Workshop on Information Structure of Austronesian Languages
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http://repository.tufs.ac.jp/handle/10108/75988
Proceedings of the 12th International Language, Literature and Stylistics Symposium
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Proceedings of the International Workshop on 'Special Genres' in and around Indonesia
巻: なし ページ: 143-147
http://contrastiveling.pbworks.com/w/page/26060802/Amele