研究概要 |
バイリンガル話者と呼ばれる人々は、二つの異なる言語を高度に駆使し、産出することができる。しかし、バイリンガル話者の言語認知機構に二つの異なる言語の統語構造がどのようにして共存されているのかを扱った研究は希少で(Hartsuiker et al., 2004; Schoonbaert et al., 2007)、日本語を扱った研究は存在しない。この問いに答えるためには、 統語構造が異なる言語を使用して検証を行う必要がある。よって本年度は、主辞後続型言語である日本語と、主辞先行型言語である英語それぞれを話す話者の産出過程を別々に調査し、同様の結果が得られるかを心理言語学の手法によって検証した。詳しいデータは現在解析中であるが、日本語と英語ともに、以前使用した統語構造(この場合は態)を再び産出する傾向が見られた(Tanaka et al., 2011)。このことは異なった言語においても統語構造の構築において同じ過程を使用し、さらにはバイリンガル話者を対象にした実験を行えば同じ結果が得られ、人間の認知システムの一部としてどのような言語情報も共存されている統語共存説の可能性を示唆している。
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