研究課題/領域番号 |
23720217
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研究機関 | 福井県立大学 |
研究代表者 |
森 英樹 福井県立大学, 学術教養センター, 講師 (20534671)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 意味変化 |
研究概要 |
平成23年度の研究計画は、本研究における理論的枠組を提示し、日本語を中心とした事例研究を遂行することであった。研究成果は、各種学会での発表機会があり、他の研究者と意見交換をすることができた。具体的な内容としては、9月にポーランドで開催された国際学会Cognitive Perspective on Contrastive Grammarでは、意味変化の文法化と語彙化の観点から、英語と日本語の発話動詞を使った命令形定型表現"Talk about X"と「うそつけ」の歴史的発達について考察した。両言語は歴史的、地理的につながりはないものの、発話動詞の意味変化に関してはかなりの類似点が見られる。これは、人間の認知作用が言語の意味変化に強く影響していることを示し、言語研究における認知的視点の重要性を示唆している。また、10月に韓国ソウルで開催されたThe 21st Japanese/Korean Linguistics Conferenceでは、本研究の中心となる意味変化における2つの観点(語彙的視点と構文的視点)について、日本語の条件命令文「Vてみろ」の先行研究をメタ的に考察することによって、意味変化のメカニズムの理解を深めた。同一の構文であっても分析の視点が異なると、文法化における一方向性仮説に反する場合とそうでない場合とが出てくることを実証した。さらに、この2つの視点が、挨拶表現として機能する「さらば」や植物名としてのforget-me-notなど、他の慣用表現の発達を論じる際にも有効に働くことも分かり、本研究の方向性が妥当であることを示している。最後に、本研究の理論的枠組みとは直接は関連しないが、本研究の主要言語現象である命令文に関して、mirativityの観点から分析するという着想を得て、Australian Linguistics Societyの年次大会で発表できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3種類の学会発表を通して、本研究に関わる言語現象ならびに理論的背景の理解を深めることが出来たという点で、当初の目標を達成している。ただ、学術雑誌等への論文投稿の機会が遅れがちになってしまったので、平成23年度内に論文の刊行は実現しなかった。現在、学会発表した内容を加筆修正して、プロシーディングズ論文として査読中である。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の研究計画としては、理論的な枠組みの検証として、日本語と英語を対照させながらの事例研究を主軸に進める予定である。日本語の各種構文のデータ収集ならびに分析は、23年度の学会発表等を通して基盤は整ったように思うが、英語に関しては、歴史データの準備を24年度中に急いで整備する必要がある。方策としては、各種コーパスを精査し、必要なデータ(図書、コーパス、辞書)を入手し、分析していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
購入予定だった図書が品切れや絶版であったり、海外出張旅費で航空費が予想よりも安価であったりしたことが、平成23年度使用予定の研究費が余った経緯である。余り額は約5万円なので、次年度計画内容を大幅に変更するまでの必要性はないと考えている。具体的な使用計画としては、55万円のうち、設備備品費(意味論、歴史言語学関連図書、辞書)25万円、消耗品費5万円、旅費(学会参加、資料収集)25万円を予定している。
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