研究課題/領域番号 |
23720219
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
陳 捷 立命館大学, 文学部, 講師 (10469182)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 甲骨文字 / 同文卜辞 / 商代文化 |
研究概要 |
本研究は同文卜辞を主な研究対象として、これまで出版された各種の著録書を検討し、未発表の甲骨をできるだけ詳しく調査した上で、同文卜辞を遺漏なく整理する。このように関連卜辞を網羅し、正確な釈文を作り、綴合できるものを綴合し、時代や内容によって分類し、しかるべき出典を詳しく挙げ、索引を作り、同文卜辞に関するデータベースを構築する。 一組の同文卜辞について、出土場所の特定や内容上の特色などに留意し、一つの甲骨群として考察する。同文卜辞を全面的に比較研究することによって、甲骨文字の共時性を考察し、文字の様相や書写習慣を年代ごとに検討し、未解読の文字を慎重に考証し、その文法体系をも探究する。更に出土場所を特定し、殷墟遺跡を積極的に踏査し、殷代の占卜機関や関連制度を明らかにする。 初年度はまず研究資料の収集から始めて、先行研究の成果を広く集め、深く理解し、正確に把握した。『甲骨文合集』・『小屯南地甲骨』・『英國所藏甲骨集』・『甲骨文合集補編』・『殷墟花園莊東地甲骨』・『殷墟甲骨輯佚』などの甲骨著録書を丹念に調べ、全ての同文卜辞を抽出し、データベースの基本資料を蓄積した。中国にて現地調査を行い、甲骨の実物を確認し、未公刊の甲骨資料を調査してきた。拓本だけではなく、甲骨の実物をも観察し、卜辞を解読して正確な釈文を作り上げた。 これらの同文卜辞について、まず董作賓の断代基準(近年の研究成果により若干の修正を加えられたもの)によって、甲骨を五つの時期に分けて、更に内容によって分類した。既に公表されたものについて、これまで付けられた著録番号を全部調べ、それぞれの著録履歴を表にまとめて明らかにした。 以上の作業と共に着実に研究を進め、一部の成果をまとめた。2011年12月、香港浸會大學の「簡帛・經典・古史」国際フォーラムにて「從甲骨卜辭的驗辭看商代的神權政治」と題する報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は研究計画のとおり、同文卜辞の調査と整理を中心に順調に進んでいる。研究代表者は鋭意研究に努め、研究環境が整備されていることもあって、当初計画では次年度以降に予定していた研究発表を前倒しして、本年度の国際学会にて行うことができた。また、次年度に予定していた現地調査の一部も本年度に実施することができた。 このような努力によって、研究をより円滑に進めることができ、多くの研究成果が期待される。また、比較的早く研究成果を発信することによって、学術交流を深めつつ、研究目的を早期達成できる。これらのことを踏まえて、本年度は当初の計画以上に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は初年度に続き、研究計画に沿って着実に研究を進め、研究目的の達成を目指して鋭意推進してゆく予定である。また、時間が許す限りある程度融通を利かせて一部の研究計画を前倒しして実施したいと考えている。いずれにせよ、より早く多数の研究成果を上げるため、できるだけ多くの資料を精査しつつ、厳密に分析して慎重に考証し、深みのある論文をまとめてゆく。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度は一部書籍の納品が遅れ、当該年度の研究費に未使用額が生じたが、次年度に納入されるため、今年度行う予定の研究計画と併せて実施する。 次年度については、資料の収集・整理及びそれに基づくデータベースを構築するために、パソコンの周辺機器(外付けハードディスク・スキャナなど)が必要となるため、研究費を使用して購入する予定である。各種資料集や先行研究の成果を含めて、甲骨学・文字学関係図書が欠かせないものなので、引き続き購入する。また、実地調査を行うために、資料収集に不可欠なビデオカメラなどを購入する費用や旅費に充当する。このほか、積極的に研究成果を発信するため、研究発表や学術交流を行う際の国内外旅費にも充てる。
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