昨年度の研究成果を踏まえ、同文卜辞の総合的研究IIに取り組み、甲骨文法や占卜制度について検討してきた。一組の同文卜辞について、内容の特徴や出土場所などに留意し、一つの甲骨群として考察している。一組の同文卜辞の中で、文型が異なることがあるので、このような卜辞を通して、同じ意味の文型をそれぞれまとめて、そして甲骨文字の文法体系を探究してみた。とりわけ虚字の使い方や文の構成についても、同文卜辞を比較してそれらを把握した。 また、同文卜辞に見られる商代の諸種の制度はもとより、それを記した甲骨の出土場所も商代の占卜制度を示唆するものである。一部の同文卜辞がいくつかの異なる場所から出土したことから、当時は異なるところで保管されていた可能性が高い。そこでできるだけ同文卜辞の出土場所を特定し、それらの関係を整理することによって同文卜辞の作り方を考察した。同文卜辞を網羅し、その全貌を明らかにした上で、文字や文法に関する共時的研究を行い、より細かい時代的特徴をいくつか提示し、また、同文卜辞の作成の法則を見出し、中国古代の占卜制度を解明するための手掛かりを得た。 以上の研究成果をまとめ、論文「甲骨同文卜辭的用字特點」を作成し、2013年11月、中央研究院歴史語言研究所の「古文字學青年論壇」(「古文字学青年フォーラム」)にて発表した。また、2014年3月、京都大学学術出版会より小著『甲骨文字と商代の信仰──神權・王權と文化』を刊行した。
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