研究課題/領域番号 |
23720221
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研究機関 | 関西外国語大学 |
研究代表者 |
澤田 淳 関西外国語大学, 外国語学部, 講師 (80589804)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 話者指向性 / 慣習的推意 / ダイクシス / 直示 / 意味論 / 語用論 / 新グライス / 歴史語用論 |
研究概要 |
本研究は、ダイクシス(deixis)と推意(とりわけ、慣習的推意(conventional implicature))に関する一般的・理論的な問題及び個別的・具体的な問題について考察を行った。 ダイクシスについては、C. Fillmore、S. Levinsonらの研究を比較検討したうえで、今後のダイクシス研究の基盤となる基礎的研究を行い、その成果をモダリティワークショップ(澤田治美氏主催、2012年3月17日)にて発表した(「ダイクシスを捉える枠組みとその語用論的基盤―ダイクシスの定義と認定基準の問題を中心に―」)。また、個別的研究として、対照語用論・歴史語用論の観点から、日英語の直示移動動詞(「行く/来(る)」、come/go)の対照研究を行い、その成果を国内学会にて発表した(「日本語の直示的移動動詞に関する歴史的研究―中古和文資料を中心に―」関西言語学会第36回大会(2011年6月12日)、「ダイクシスにおける直示中心の階層スケールと語用論」日本語用論学会第14回大会(2011年12月4日))。 慣習的推意については、P. Grice、C. Potts、E. McCreadyなどの語用論的・形式意味論的研究における定義や適用される現象の範囲を比較検討すると共に、慣習的推意の特徴(とりわけ、会話的推意、前提、言表内容との違い)について考察した。個別的研究として、日本語指示詞と慣習的推意の関係について考察を行い、その成果を澤田治(三重大学)氏との共同で下記学会にて発表した(The meanings of modal affective demonstratives in Japanese. The 21st Japanese/Korean Linguistics Conference(2011年10月22日))。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までのところ、基礎的・理論的研究と個別的・記述的研究の双方をバランスよく進展させることができている。また、その成果を国内外の学会や雑誌にて公表・掲載することができており(または、公表・掲載が予定されており)、概ね、研究計画通りに順調に研究が進んでいる。本年度の成果をもとに、次年度以降も、さらに、ダイクシスと慣習的推意の理論的形式化を推し進め、意味論・語用論への理論的貢献を目指していきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、慣習的推意に分析の重きをおき、記述面、理論面において、それぞれ、次の事柄を課題点としたい。[記述面]:慣習的推意表現のリストの作成と用例のデータベース化、他言語(英語、等)の慣習的推意表現との対照、等。[理論面]:慣習的推意表現における視点移動の問題、歴史語用論との理論的接点、主観性の概念的整理、慣習的推意の理論モデルの提示、等。 理論的な問題を深化・発展させていくためには、専門分野の研究者との意見交換を積極的に行い、自身の研究の理論的な位置づけと意義を明確化する必要がある。そのために、国内外の学会・国際学会、ワークショップ等に参加し、自身の研究成果を積極的に公表すると同時に、参加者と多角的な観点から意見交換を行っていきたい。また、慣習的推意やダイクシスに関する一般的・理論的な問題に関して、活発な議論を喚起する目的で、歴史語用論との連携を企図したワークショップや、対照言語学的研究をテーマとしたワークショップを企画したいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の主な使用対象としては、形式意味論、語用論などの言語学関連の書籍や消耗品等の購入、及び、国内、国外の学会での発表・参加の際の国内・国外旅費が挙げられる。また、共同研究者との研究上の打ち合わせや意見交換を行うための旅費・滞在費にも研究費を充てる予定である。
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