本課題の主たる研究テーマは,[A]日本語研究論文に関する諸情報の電子化の実態把握と分析,[B]電子化された論文情報にアクセスできる文献目録モデルの作成,[C]インターネット上の日本語研究情報の活用法の検討,の3点である。平成24年度も,これら3つすべてのテーマに関して調査および分析・考察を行った。 まず,テーマ[A]に関しては,前年度から継続する形で,『国語年鑑』のデータを用いて,インターネット上における日本語研究論文の本文情報の公開状況に関する調査を行った。 テーマ[B][C]に関しては,前年度に示した「「つなぐ」文献目録モデル」の具体的事例として作成・公開した「「とりたて」関連研究文献目録」のデータを利用し,テーマ[A]と連関させながら考察を行った。 「「とりたて」関連研究文献目録」については,増補改訂作業を進め,最終的に,2000年~2013年の文献,計664編の情報から成る目録が完成した。また,利用者からのフィードバックを受けて,その課題を検討した。 さらに,モデルに基づいたこの文献目録が,論文情報(特に本文情報)へのアクセス性の向上にどの程度貢献するのかを評価することを目的とした調査を行い,その分析結果を論文化した(「電子化された日本語研究論文の流通実態と「つなぐ」文献目録によるアクセス支援」『鳴門教育大学情報教育ジャーナル』10号)。 本課題の成果としては,(1)日本語研究論文情報の電子化がCiNii Articlesおよび機関リポジトリに大きく依存していること,研究者の論文情報の入手行動から見て情報へのアクセスが確保されないケースがあること,の2点を具体的な実態として明らかにしたこと,および,(2)この問題点を解決する情報基盤としての文献目録モデルの提案と文献目録の作成・評価を行ったこと,が挙げられる。
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