研究課題/領域番号 |
23720232
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研究機関 | 國學院大學 |
研究代表者 |
家入 博徳 國學院大學, 文学部, 講師 (20586507)
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キーワード | 仮名 / 文字・表記意識 / 仮名表記史 / 仮名自筆資料 / 定家以降 |
研究概要 |
本年度は本研究対象資料のうち、出版されている写真資料を引き続き収集するとともに、未出版の資料の実地調査・撮影等を行った(国立歴史民俗博物館)。また、収集した資料は、適宜翻字およびデータベースを作成し分析を行った。 本年度は研究の成果として、平成24年10月に「定家様を用いた書記者の書記規範意識」を論文発表した。定家以降の書記のあり方を考える場合、「定家様」で書記した人々が定家の設けた書記規範をどこまで意識していたのかを明らかにすることは、書記の通時的な規範性を考える上で重要であることから考察を行った。なお、考察資料として、「定家様」で書かれており、さらに自筆が確認されている二条為藤(冷泉家時雨亭文庫蔵)と二条定為(静嘉堂文庫蔵)の仮名自筆資料を使用し、さらに、定家自身の書記資料として『拾遺愚草』(冷泉家時雨亭文庫蔵)を使用し、書風と書記規範の関係性について考察を行った。本考察を通して、定家以降、仮名遣いの実態については、定家の著した『下官集』を厳守する傾向であることが分かった。つまり、定家以降の人々が歌論書で繰り返し述べるように、書記においても実践していたものと考えられた。また、文字使用について、漢字においてはその共通性を見いだせなかったが、異体仮名において、為藤が定家の文字使用に比較的近似した傾向があることが分かった。定家自筆の諸本の多くは、為家以降冷泉家に相伝されたが、為藤は二条家嫡流であったことから、少ないながらも定家の自筆資料を見る機会が多く、その影響が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年に引き続き、本年度も研究において調査対象となる写真資料を購入収集をした。また、同時に、本研究対象資料の実地調査・撮影・焼付け等を行い資料を収集した。なお、本年度は国立歴史民俗博物館において調査を行った。さらに、収集資料を総合的に集約し、さまざまな角度から分析・研究できるように、データベースを作成した。具体的には、本文を漢字・仮名の区別ができ、異体仮名で翻刻する作業を行った。なお、データベース作成には予想以上の時間がかかることから、本年度は作業従事者を使用した。そのことにより、データベース作成は予想以上に順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度同様、今後の研究においても出版されている写真資料の収集を中心に、未調査資料の実地調査・撮影・焼付け等を行う予定である。また、それらの調査資料のデータベースを作成、当時の文字・表記意識を分析し、実態を明らかにした上で研究成果を口頭発表・論文等で公表する予定である。 本年度、作業従事者を使用したところ、データの蓄積が思うように進展したことから、今後も作業従事者を使用していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度も本年度同様、出版されている写真資料の収集をするとともに、未調査資料の実地調査・撮影・焼付け等を行う予定である。したがって、出版されている写真資料を中心に図書を購入する。また、資料所蔵機関に依頼した資料の複写費・マイクロフィルムからの焼付費、撮影費として使用する。なお、次年度は数ヶ所において遠方の調査を行う予定であるため旅費を使用し、作業従事者を使用する場合は人件費として使用する。
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