研究課題/領域番号 |
23720233
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研究機関 | 東京家政学院大学 |
研究代表者 |
内田 宗一 東京家政学院大学, 現代生活学部, 准教授 (30314339)
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キーワード | 国語学 / 国語学史 / 文字史 / 表記史 / 近世 / 国学 / 仮名 |
研究概要 |
本研究は、近世の日本語表記について、当時の人々の有していた表記意識と資料に現れた表記実態の両面から分析を行い、両者の相関の様相を考察しようとするものである。具体的なテーマとして掲げた、国学者の日本語表記に関する問題、近世出版文化と筆耕に関する問題という2点のうち、平成24年度は前者についての考察を主たる目的として、以下のとおりの活動を行った。 1、草鹿砥宣隆自筆資料における使用仮名字体についての調査を行った。その結果、古代を志向する復古的な表記意識にもとづく仮名の用字がそこに認められること、特に上代特殊仮名遣にもとづく仮名字体の使い分けを実践していることを明らかにすることができた。上代特殊仮名遣にもとづく仮名字体の使い分けという点は、これまで調査を行ってきた他の国学者には見出されなかった特色であり、近世国学者の日本語表記に関する問題を考察する上での新たな視点が得られたと評価できる。また、上記の事実は、上代特殊仮名遣研究史上における草鹿砥宣隆の位置付けを考察する上でも有用な材料となることが期待される。 2、草鹿砥宣隆の著述に関する資料調査を実施した。豊橋市中央図書館および豊橋市美術博物館(森田家文庫)に所蔵される草鹿砥宣隆関連資料について、自筆資料を中心に書誌調査ならびに撮影を行った。 3、近世の日本語表記に関する先行研究を収集し、研究の現状を把握した。 4、近世国学者の著述の影印・コピー・活字翻刻本等を収集し、その内容について検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
近世国学者による復古的な表記意識にもとづく表記の実践のありようを明らかにするための調査が着実に進んだ点、特に上代特殊仮名遣にもとづく仮名字体の使い分けの実践例が存在していたという新たな発見があったことは評価できる。また、所蔵機関へ赴いての資料調査も、研究発表へと直結する成果が得られたという点で有意義であったと言える。ただし、その一方で、資料調査が少ない回数にとどまったこと、近世出版文化と筆耕に関する問題の考察について明確な成果をまとめあげられていないこと、ならびに研究の成果が論文発表の段階にまで至らなかった点については、研究計画の遂行が不充分であったと言わざるをえない。
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今後の研究の推進方策 |
国学者の日本語表記に関する問題については、平成24年度までの成果を踏まえた上で引き続き資料調査ならびに分析を行う。具体的には、草鹿砥宣隆・鹿持雅澄ら、本居宣長よりも後の時代に活躍した国学者を主たる対象とする。また、これと並行して、近世出版文化と筆耕に関する問題についても、当初の計画に従い、曲亭馬琴およびその周辺を主たる対象として設定した上で、資料の調査・収集を行う。活字翻刻本・影印本として公刊されているものも含めて馬琴の日記・書簡・草稿類を収集し、資料の読解・調査を進めるとともに、原資料の閲覧・調査もあわせて必要と判断されるものがあった場合は、資料調査に赴く。
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次年度の研究費の使用計画 |
調査旅費および文献複写代、日本語学・近世文学資料に関する書籍の購入費、その他作業の上で必要が生じた物品の購入費として使用することを計画している。調査旅費について、具体的には、平成24年度に引き続いて豊橋市中央図書館(羽田八幡宮文庫旧蔵本)、豊橋市美術博物館(森田家文庫)、その他に本居宣長記念館、天理大学附属天理図書館等を計画している。
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