研究課題/領域番号 |
23720234
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研究機関 | 広島経済大学 |
研究代表者 |
小川 俊輔 広島経済大学, 経済学部, 准教授 (70509158)
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キーワード | 方言学 / 言語地理学 / 地理言語学 / 日本語学 / キリシタン語彙 / キリスト教用語 / 渡来語 / 日系南米移民 |
研究概要 |
【本研究の目的、問題意識】本研究の目的は、「渡来語」の緊急調査とデータベースの構築である。「渡来語」とは16世紀以降に西欧から輸入された外来語のことをいう。各地で受容され土着化した「渡来語」は、今日、「伝統的方言語彙」となっている。しかし、記録されぬまま消滅の危機に瀕しており、早急な調査・記述が必要である。 【平成24年度の主な研究成果(3点)】 《1.全国郵送調査のための事前準備の進展》この調査では、日本各地のカトリック教会に調査票をお届けし、ご返送いただくことを予定している。このため、カトリック教会の協力を得られるかどうかが、調査票の回収率に大きな影響を持つ。平成24年度は、カトリック教会の関係者との協力関係を構築することに意を注ぎ、その成果があった。 《2.VIIth Congress of the International Society for Dialectology and Geolinguistics における「天国」および「paraiso」にかんする研究発表》2012年7月にウイーンで開催された標記の国際会議において、「天国」および「paraiso」の歴史について研究発表を行った。今日の「天国」の一般化・繁用は、外来文化の日本的受容――たとえばカトリック信者ではない新郎新婦が教会式の結婚式を挙げること――の様態を示す典型的な事例として解釈できると主張した。 《3.ボリビア多民族国に暮らすキリシタン家族の信仰生活史の記述》前年度に実施したサンファン日本人移住地での聞き取り調査の結果などを基に、キリスト教史学会の第63回大会(2012年9月、福岡女学院大学)で「南米に移住した長崎のキリシタン家族 ―ボリビア多民族国サンフアン日本人移住地の事例―」と題する研究発表を行った。当該移住地におけるキリシタン家族の信仰生活史にかんする、渡来語の現況を含む報告である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
【研究計画】 交付申請書に記した研究計画の概要は次のとおりである。①調査票の作成(H23年度)、②調査票の印刷、製本、郵送(H24年3月)、③返送された調査票の整理、電子化(H24年4月~)、④調査結果に基づく論文または口頭発表(H24年4月~)、⑤未返送の方への催促状の送付(H24年8月)、⑥調査結果の公表(H26年3月) 【平成24年度の実施状況】 平成23年度の計画については、予定どおり①を終了した。②についても準備できているが、2011(平成23)年3月11日に東日本大震災が発生したため、平成24年度も、前年度に引き続き、調査票の発送を見合わせた。発送は平成25年度の早い時期を予定している。他方、調査にご協力いただくため、平成24年度はカトリック教会との関係作りに意を用いた。④については、国内外の学会で積極的に口頭発表を行い、学術論文として公刊した。この点については、当初の計画どおり進んでいる。進展状況について「やや遅れている」としたのは、調査票を発送していないことを重く見たためである。
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今後の研究の推進方策 |
上記【研究計画】欄に記した②-⑥に沿って研究を進めていく。東日本大震災から2年が経過したものの、「被災地の復興は遅々として進んでいない」との情報も耳にするが、平成25年度のうちに成果をまとめる必要があるため、同年度の早い時期に調査票を発送し、返送されてきた調査票から、順次、データベース化を進める。また、平成25年4月より研究代表者の勤務先が変わり、日本語学の周辺領域を専門とする大学院生の協力を得られやすくなった。力を借りながら進めていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記のとおり、\227,267の繰越金が発生した。これは平成23年3月11日に発生した東日本大震災により、調査票の発送を平成25年度に繰り越したからである。「被災直後に被災地へ調査票を送付することは不躾である」と感じられ、発送がためらわれた。しかし、速やかに被災地のことばを記録すべきとの立場もあり、また、文化庁もその方向で委託調査・研究を進めていると耳にした。意を決し、平成25年度の早い時期に調査票を発送する。
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