本年度実施した調査研究は,(1)収集した音声資料の整理(2)永住帰国者に対する調査の実施,(3)これまでの研究成果の公表,(4)研究のまとめ,の4点を実施した。 (1)収集した音声資料の整理について,本年度では,これまで収集した日本サハリン同胞交流協会,北海道立北方民族博物館所蔵の資料の中でも,音声資料について書き起しを行った。ここで扱った資料は,戦後日本に引き上げてきたウイルタ人,ニヴフ人を対象とする音声資料,ならびに1990年代から日本に永住帰国を果たした日本人による音声資料,映像資料である。 (2)永住帰国者に対する調査の実施。本年度においても,日本に引き上げてきた樺太方言話者に対する調査も北海道札幌市内で継続的に実施した。調査では13人の永住帰国者を対象にした面接調査を実施している。札幌市で調査をしたのは,これは2003年以降,サハリンで調査を実施したときの話者が2010年に永住帰国したためである。調査では,北海道社会福祉協議会の協力を得た。 (3)研究成果については,ニヴフ人の用いる日本語の言語的特徴について分析した結果を北海道方言研究会で発表した。また,関連する研究会(国立国語研究所共同研究プロジェクト(「日本語変種とクレオールの形成過程」)で関連するテーマについて口頭発表を行った。この他には私が主催した人間文化研究機構第21回シンポジウム「海を渡った日本語」の趣旨説明で本プロジェクトの成果を紹介した。 (4)研究のまとめ。この他には,本研究期間中に実施した調査,収集した調査データ(音声資料,文献資料等)の整理を行い,全体のまとめを行った。今後の研究計画を立案した。
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