研究課題/領域番号 |
23720239
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
平山 真奈美 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (90580027)
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キーワード | 母音の無声化 / 日本語 / アクセント / 対立 / 知覚 / 形態論 / 韻律構造 |
研究概要 |
本研究の目的は、日本語らしさを特徴づける音声現象の一つである母音の無声化現象について、まだ本格的な研究が非常に少ない韻律構造に注目しメカニズムを解明することである。4つの課題を立て、24年度はそのうち以下の2点について研究および成果報告が進んだ。 (1)母音が無声化したときに聞き手が音韻構造、特にアクセント構造、を再構築できるかについて。 (2)形態論的な情報が音声的な現象に影響を及ぼさないのか、フットという韻律構造に着目して調べる。 (1)は23年度からの継続課題であったが、24年度は国際学会で発表するとともに、論文を執筆し、国際的な学術雑誌へ投稿した。雑誌投稿に関して、現在審査の結果待ちである。 (2)については、当初計画していた、音声データを使って調べることについては今年度は準備段階にとどめ、それより緊急性の高いと思われる、辞書データを使っての調査を先に行った(昨年度の実施報告書を参照)。手法の差に若干違いこそあれ、研究課題に変更はない。データを分析した結果、母音の無声化に関して重要なのは、形態論的な情報ではなくて音韻的な情報(具体的には韻律構造)である、とする仮説にサポートを与えることとなった。この成果を国際学会で発表し、そこで得られたフォードバックを活かしてその後国内シンポジウムで発表した。25年度中に分析結果報告を執筆予定である。また、音声データを使う手法による課題の解明も準備を進め、準備段階を研究会にて発表した。25年度早々にデータ収集を行い、その後速やかに分析、発表する予定である。 「研究実施計画」では、24年度中に(2)に加えて残りの2つの課題(子音連続に関する研究、きしみ声の記述)に着手する予定であった。(2)に関しては上述のように非常に研究が進んだが、残りの二課題については、残念ながら24年度末現在準備が遅れている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究実施計画では、平成24年度中に、形態論との関わりについて音声データを取り、その分析、結果報告をするとともに、子音連続に関する音声プロセスの研究ときしみ声の記述に関しても着手する予定であった。形態論との関わりについては、辞書データによる分析で結果報告ができ、この意味で、研究の目的の一課題を解明するという成果を予定通り上げることができた。しかし残りの2点には着手できなかった。このことから、研究実施計画に照らすと、全体的な進歩状況としては、遅れている、と判断した。 また、研究環境の変化による原因もある。研究実施計画は、研究職についていた前職時、その職を想定して作成した応募書類に基づいており、その後「研究及び教育」職に就いたため、研究に割くことの出来る時間が当初予定より短くなっている。このことが計画実施の遅れの一因となっていると分析できる。
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今後の研究の推進方策 |
25年度は引き続き形態論と母音の無声化の関係について、音声データを用いて解明することから始める。辞書データを用いて24年度に行った分析に加えて更に音声データを用いた研究をする意義は大きい。これに並行して、辞書データを用いた分析結果に関して論文を執筆し、雑誌へ投稿して報告する。 また、25年度は子音連続に関する音声プロセスの研究に着手する。
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次年度の研究費の使用計画 |
音声データの収集および分析に未着手のため、「人件費・謝金」の項目に未使用額が残った。また、国際学会での発表があったものの、例年であれば海外で行われる学会が24年度はその開催国が日本であったため、旅費に未使用額が残った。 次年度は音声データの収集および分析を行い、また海外での発表も念頭に入れているので、全体としては当初の計画通りの予算執行が出来る予定である。
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