本研究は、20世紀後半の新聞記事を資料として、抽象的な事柄を表す外来語が基本語化していく過程を、歴史的・計量的に記述し、その要因を文章論的な観点から明らかにするものである。 具体的には、まず、自ら設計・作成した通時的な新聞コーパスによる語彙調査の結果を整備し、その結果から20世紀後半に基本語化した抽象的な外来語のリストを作成する。次いで、上記コーパスを利用して、外来語とその類義語の用例データベースを作成し、記事別に談話構成機能の分類を行う。最後に、それらの調査結果をもとに、20世紀後半の新聞記事における「抽象的な外来語の基本語化」現象の要因を、文章における談話構成機能の観点から明らかにする。 今年度は、初年度から2年度目にかけて作成した、紙面情報などを付加したタグ付きコーパスの通時的新聞コーパスを整備した。 次に、全文検索システム「ひまわり」を用いてKWICデータを作成し、文章(記事)の中で、外来語が、具体的にどういった機能(主として語彙的結束性にかかわる再叙の機能)を果たしているか、またそれが通時的にどのように変化しているかについて、昨年度に引き続き、調査を行った。その結果、連体修飾節構造の中と指示語句の中において、外来語は、前の叙述を「要約」したり「名づけ」たりする「とらえ直し」という機能を獲得・拡大させたことを明らかにした。このことは、20世紀後半の新聞にみられる「抽象的な事柄を表す外来語の基本語化」現象(金2011)が、外来語の文章構成機能の獲得・拡大を言語内的な要因として生じている可能性を示唆するものである。
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