本研究の目的は、近代語の代表的なコーパスである『太陽コーパス』と『近代女性雑誌コーパス』を用いて、コーパスに既存のXMLタグの情報、および新たにコーパスのXMLタグに付与する言語使用状況に関する情報と、形態素解析によって得られる形態論情報を組み合わせ、近代語の待遇表現・人称代名詞の計量的分析を行い、それらの特徴を明らかにすることである。 その達成のため、平成25年度は、XMLタグの情報と形態論情報とを利用して、次の①~③にあげる一人称・二人称代名詞および待遇表現形式の計量的分析をおこなった。これらの研究成果は論文や学会発表として発表した。 ①『太陽コーパス』の小説・戯曲の会話部分に出現する一人称・二人称代名詞について、話者性別・口語文体との対応関係を分析した。その結果、話者性別により使用する一人称・二人称代名詞の語形や口語文体との対応関係に違いがあることなどが明らかになった。 ②『近代女性雑誌コーパス』に出現する一人称代名詞について、文章の種類との対応関係を分析した。また、地の文に出現する一人称代名詞について、著者性別・文体との対応関係を分析した。その結果、一人称代名詞と文章の種類には密接な対応関係があること、地の文で女性は男性より丁寧な文体を選択し、その文体に対応した一人称代名詞を選択することなどを明らかにした。 ③『太陽コーパス』の小説・戯曲の会話部分に出現する動詞の尊敬待遇表現形式について、二人称代名詞との対応関係、形式選択における位相(年・話者性別・話者階層・口語文体)の重要度を分析した。その結果、尊敬待遇表現形式と二人称代名詞には密接な対応関係があること、位相は尊敬待遇表現形式の選択に決定的な影響力を有しないこと、こうした様相は尊敬待遇表現形式が命令形か否かにより違いがあることなどを明らかにした。
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