研究概要 |
平成24年度は研究計画の2年目として、主に、1年目に行った、英語の前置詞の三種類の機能(文法・談話・直示)の記述を発展させて、前置詞の機能が、前置詞の中心的な空間的意味から抽象的な意味を介して、派生する過程を身体性の観点から説明した。 平成24年度に行った研究は、以下の5点にまとめられる。 第一に、一つの語が複数の意味や機能を持つとはどういうことかという、語彙が持つ多義性に関して再検証を行った。具体的に言うと、先行研究において論じられてきた、具体的な意味から抽象的な意味への拡張だけでなく、具体的な意味から機能への拡張を論じることの重要性を、前置詞の機能を例にして論じ、認知言語学会で口頭発表を行った。第二に、垂直関係を表す前置詞(up-down, over-under, below, など)を例にして、日常での上下に関する様々な経験が、前置詞の文法機能を動機づけている点を明らかにし、認知言語学会でワークショップを行った。第三に、条件節の主要部となるunderの文法機能が、何かの下に居るという具体的な経験に基づいて、空間的な意味から広がっている点を、overとunderの意味拡張の非対称性を通じて明らかにした。第四に、前置詞の副詞的な用法(=不変化詞)が持つ完了用法に注目して、不変化詞による完了と文法的なhave完了の比較を通じて、不変化詞の完了は目的語指向であり、目的語が表す指示物の最終状態を表す点を論じた。 また、第五に、方法論に関しては、本研究の理論的な背景となる認知言語学と方法論となるコーパス言語学の学際的な研究の可能性に関する論文「コーパスと認知言語学」を執筆した。 また、以上の成果を応用した2つの研究を行った。まず、23年度に引き続き、コロケーション辞典の執筆を行い、次に、埼玉大学で25年度から導入予定のオンラインの英語教材CALL4の執筆を行った。
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