本研究課題では、英語、日本語、ドイツ語の否定極性表現及び意外性と累加の表現の研究を3年間の計画で行うものである。これらの表現を用いて、「ある言語表現の全体の意味がその表現を構成する部分の意味とどのように関わっているのか」という構成性の問題を 解明することを目的としている。また、3言語の比較を行うことで、構成性の普遍的性質をより明確にすることにも重点を置く。最終年の25年度は、前年度に引き続き理論的研究を重点的に行った。前2年間で得られた成果をより広い理論的視野から検討し、3言語のデータ比較を通じて人間が意味を理解する仕組みの精緻化を試みた。夏期には、アメリカのシカゴ大学を訪れ、これまでに収集したデータの確認、及び研究者(Christopher Kennedy教授)との意見交換を行った。この意見交換を通じて、これまでに得られた成果をより広い理論的視野から検討し、本研究課題を総括することができた。具体的には、日英後の詳細な比較を行うことで、「否定極性表現に存在する部分の意味の普遍性」及び「否定極性表現に存在する部分の意味と形態的構成部分の関係」が明らかになった。この研究成果を学術論文としてまとめ、国際的に権威のある学術雑誌に投稿することができた(現在審査中)。論文執筆を通じ、3年間の総括を行うと共に、今後の課題についても検討することができた。否定極性表現という一言語現象の研究に留まらず、否定極性表現を介して構成性の原理の普遍的性質の解明を行うことができた。
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