本研究は、人間言語の本質的な要因に関わる「移動」という概念の分析を通じて、言語機能の性質を明らかにすることを目的とし、複数の言語におけるwh疑問文の構造の分析をすすめることを意図したものである。平成25年度は、これまでに収集した英語、日本語、ベトナム語に関する資料とその分析に基づき、理論モデルの構築をすすめるとともに、主に英語と日本語に関して、さらなる資料収集につとめた。特に、各言語における資料は、関連する先行文献からのものだけでなく、それぞれの言語の母語話者との面談調査等を通じて収集し、発話資料などではあまり観察することのできないような文についても理論的予測に基づいて例文を作成し、容認性の判断を求めた。また、資料の分析に基づく理論的モデルの精緻化においては、国内で開催された複数の研究会等に参加するなどして、関係する最新の研究成果との比較検討および他の研究者との意見交換によって、客観性を高めることにつとめた。句構造の成り立ちに関する議論として得られた知見の一部は、論文にまとめて関連する学会誌に投稿し、掲載された。
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