研究概要 |
研究計画最終年度に当たる平成25年度は,二重目的語構文(DOC)の動詞主導の変化と構文主導の変化をさらに解明するために,De Smet氏によるThe Corpus of Late Modern English Texts, ver. 3.0. [CLMET 3.0] (2013)をコーパスとして使い,give, lend, pay, sell等のDOC構文を採りうる動詞について受益者受動(直接目的語(O2)ではなく,間接目的語(O1,あるいは受益者項が受動態文の主語となる)のデータを採った。これらのデータにさらに他の動詞の例を追加し,2014年10月下旬に行われる学会シンポジウムにて議論に付す予定である。 また,(間)主観化の問題がDOCの受益者受動発達に絡んだ可能性を,平成24年度に行った研究成果として既に執筆論文にて述べたが,さらに(間)主観化・(間)主観性と語彙的意味主導の変化及び構文主導の変化の関係を探るため,平成25年度は追加のケーススタディとして,英語法助動詞canの「発話行為」用法の発達についても調べてみた。その結果,発話行為のcan用法には他のcan用法から差別化される決定的な意味特性が存在しないこと,canを使った例に間主観化的意味が感じられることがあるとしても,それは語用論的解釈レベルにとどまっており,さらには典型的に生起するbut構文から来る意味と法助動詞の意味が混同されている可能性があることを指摘した. 発話行為のcanとよく似た表現としてしばしば言及される「真実のmay」と比較しても,発話行為のcanの間主観化は進んだ段階にあるとはいえないことも,あわせて主張した。しかしながら,(間)主観化のメカニズムおよび構文主導の文法化,さらには構文主導の文法化と構文化はどのような関係にあるのかついては,さらにデータを採って調査を続ける必要がある。
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