研究課題
今年度は,これまでの汎用コーパスの構築・分析と異なり,特定の目的に用いられる特殊コーパスの編纂とそれによる分析の方法の検討を行った.実際に作成したのは,多読学習に用いられる2種類のリーダーコーパス(Graded Reader (以下GR)とYouth Reader (以下YR))で,これらのコーパスから言語的特徴を英語学習者の視点から明らかにすることにより,多くの学生が感じるYRの「難しさ」を解明することを目的とした.まず,実際に学生によく読まれているGRと,それと同等のレベルに指定されているYRを選び,2種類のコーパスを作成し,様々なコーパスツールを用いてこれらを比較し,この二つのコーパスの間にある差を統計的に示した.レベル別の語彙の割合や語彙密度を示す,両コーパスで使用される語彙の頻度を比較する,頻度の高いコロケーションの違いを分析する文の長さ,文の構造の複雑さなどの側面を比較するなどにより,同程度のレベルとされる2種類のリーダーの間にどのような違いがあるのかを明らかにし,どのような要素が「難しさ」に繋がっているのか検証した.その結果,YRはGRと比較して,基本1000語の語彙の割合が少なくそれ以上のレベルの語の割合が大きい,レベル毎に語彙レベルが着実に上昇している,受動態の割合が高くしかも動詞句の構造が複雑である,基本語に大きな頻度の差がある,1単語が複数の語法で用いられる,複雑な文構造が見られる,叙述的な表現が多いなどの特徴があることが分かった.これらは学習者が「難しい」と感じる要素となり得ると考える.今回はこれまで多読学習の現場で使用されてきたものの,その言語学的性質について十分には分析されてこなかったYRをコーパス言語学的にGRと比較することによって,その特徴を明らかにした.
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Procedia-Social and Behavioral Sciences
巻: - ページ: -
Computer-Assisted Language Learning: Learners, Teachers and Tools
巻: - ページ: 21-46
Attitudes to Technology in ESL/EFL Pedagogy
巻: - ページ: 36ー52