研究の目的は、英語の連鎖表現を扱うフレイジオロジーの観点から、英語の変則的な表現や構文を発掘し、または、これまで知られているものも含めて見直して、変則的な形に納得のいく説明を与えることにあった。変則的な構文や表現は、文法規則に則って作られているのではなく、フレイジオロジーが主張するような ready-made chunks として内部構造を意識することなく形成されることを明らかにした。そのために従来の文法では説明の難しい振る舞いが見られるのである。従来の統語論中心の文法では扱われなかった事象について、新たな見方を提示し、現代英語についての認識をさらに深めることができた。 最終年度は、フレイジオロジーの国際学会である Europhras 2012 や 英語学の国際学会である ELLSEE で研究成果を報告し、動詞・形容詞がとる変則的な valency patterns の実態、on account of の接続詞化について、海外の研究者と意見交換できた。 2013年3月に東京で開催されたフレイジオロジー研究会国際大会で、2年間にわたった課題研究の成果の集大成を口頭発表し、変則的な表現を扱うフレイジオロジーと言語変化の研究の連携の必要性などを強く主張できた。今後の課題とすべき問題を考えるうえで極めて意味のある発表であった。 フレイジオロジーは主に連鎖表現を扱うが、実証的な言語研究対してフレイジオロジーが持つ可能性や重要性をアピールでき、今後の言語研究に大きな示唆を持つものとなった。この研究で、変則的な構文や表現の形成過程や振る舞いの一端を明らかにしただけでなく、フレイジオロジーの考え方を取り入れた今後の英語の実証的研究のひとつの在り方を示すことができた。
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