研究課題/領域番号 |
23720258
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研究機関 | 北星学園大学短期大学部 |
研究代表者 |
前川 貴史 北星学園大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (50461687)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 言語学 / 統語論 / HPSG |
研究概要 |
近年急速な進展を遂げている制約に基づいた言語理論の一つ,Head-Driven Phrase Structure Grammar(以下HPSG)の枠組みで,英語の節および名詞句における語順に関する諸問題を扱った.具体的には,否定倒置構文 (e.g., Under no circumstances would John do it for Mary.) において左端に位置する否定表現や、それと共起するWH句との位置関係を決定するメカニズムを明らかにした.これは 'An HPSG Approach to Negative Inversion Constructions' という論文として『北星学園大学短期大学部北星論集』第10号に発表した。また、依存関係に基づいて統語構造を記述するWord Grammar 理論と句構造に基づくHPSGの比較を行い、'Phrase structure and dependency structure: two analyses of the English left periphery.'の論文として『Kyoto Working Papers in English and General Linguistics』に発表した。さらに、口頭発表を2回行った。まず、「HPSGから見た‘a lucky three students’の構造」として、英語の「不定冠詞+形容詞+数詞+複数名詞」の構造を分析し、関西言語学会(大阪府立大学)で発表した。次に、'Emphatic interrogatives in Okinawan' として、The Linguistics Association of Great Britain にて発表した。琉球語の疑問文を対象とした研究であるが、究極的には英語のWH疑問文との比較対照研究につながる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の【研究実績の概要】欄に示したように、論文2本と2回の学会発表として研究を発表することができた。研究開始当初は英語の分析のみを行う予定であったが、その後の進展によって琉球語の疑問文も研究対象にすることになり、それについても研究発表ができたのは大きな成果であった。さらに、University of Essex の Robert Borsley 教授と面談を行い、研究をさらに進展させることができた。
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今後の研究の推進方策 |
223141円の繰越金があるが、これは予定していた出張を大学業務との関係でいくつか取りやめたためである。中止した分は2012年度において行う予定である。本研究で使用するデータを広範かつ効率的に収集するために,British National Corpus を利用する. これはイギリス英語の書き言葉・話し言葉を集めた1 億語から成るコーパスであり, 公開されているものの中では世界最大である. これを用いて, 研究対象となる語や構造が実際に英語のネイティブスピーカーによってどのように使用されているかを調査する.そのほかにも英語圏の文学作品・新聞・インターネットなどで実際に使用されている英語から直接得る.基本的に本研究は基本的には申請者のみによって行われるが, 学会・研究会などでの他の研究者との意見交換や, 神戸市外国語大学・University of Essex での筆者のもとの指導教授に意見をうかがうことによって研究をさらに充実したものにしていく予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度に得られた結果,および2007年に University of Essex に提出した PhD 論文を基にして,研究成果を図書の形で出版できるよう準備する.具体的には以下のような活動を行う計画である。第1に、文献(英語・日本語の統語論についての理論的研究,名詞に関する記述的研究,理論言語学についての最新の文献,英語や日本語以外の言語の統語論についての研究についてのものなど)を読む.第2に、文献収集や研究会合のために,神戸市外国語大学・University of Essex などに出張する.第3に、文学作品・新聞・インターネット・大規模コーパスなどからデータを収集する.第4に、日本語や英語の母国語話者からの聞き取り調査を行う.第5に、神戸言語学研究会(京都・神戸)などの研究会に出席し,他の研究者と意見交換を行う.第5に、国際学会・国内学会において研究の成果の一部を発表し,他の研究者と意見交換を行う.最後に、主要な学術誌(例えば English Linguistics, Linguistics, Lingua など)に研究の成果の一部を投稿する。
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