研究概要 |
平成25年度は、テンポに関する音声実験を通して、英語母語話者の心理に存在する最適テンポを究明した。本研究では、「最適テンポは最も記憶しやすいテンポである」という仮説の基、実験を進行させ、その結果、被験者が最も正確に記憶・発話するテンポを浮き彫りにすることができれば、そのテンポを最適テンポと結論付けることとした。 実験では、30名の被験者(英語母語話者)に500ms.に設定したメトロノーム音のテンポを記憶させ、その後すぐ、英文:“/ JEFF will / GO to the / DENtist on / FRIday./” の各フットを、記憶した500ms.のテンポに合わせて発話するように依頼した(各文強勢を500ms.の間隔で読み上げることになる)。同様の手法で他のテンポ(300ms., 400ms., 600ms., 750ms., 1000ms., 1200ms., 1500ms.)についても実施し、音声分析器を用いて文強勢間の発話時間を測定した。被験者が英文を発話する際は、記憶のみを頼りとした実験結果を得るため、メトロノーム音はもちろん指等でテンポをとることも禁じた。また、本実験で採用した英文は4つのフットから構成されているが、フットの発話時間にはポーズも含まれており、最後のフット(Friday)ではこのポーズの時間を測定することが困難であるため最初の分析においては対象外とした。 実験分析の結果、本研究では400ms.~500ms.を最適テンポと結論付けた。もちろんこの最適テンポは、被験者の平均的な数値を基に導き出しており、実際には個人差も激しく、絶対的・普遍的な数値ではない。しかし英語習得に目を向けると、やはりこの最適テンポを基本(教科書的)に捉えて英語リスニングの練習をすることが、英語能力の向上につながっていくと考えられるのである。
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