研究課題/領域番号 |
23720264
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
範 玉梅 大阪大学, 文学研究科, 研究員 (80551952)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 国際情報交流 / 多文化 / 移民 / ジェンダー |
研究概要 |
本研究は、日本における私費留学生から永住者になった8人の中国人女性を研究対象にし、日本語を使う彼女らの学びに焦点におき、第二言語で生きる彼女らの経験及びアイディンティティの変容をライフストーリーで捉えようとするものである。研究協力者である中国人女性の8人は、元私費留学生であり、大学院修了後に就職から失業への経験をし、未来の行方を心配しながら、様々な葛藤に乗り越え、日本で永住する決意に至った30半ばの人たちである。彼女たちのこの日本で生きる十年ほどの体験をライフストーリーで明らかにするため、研究期間は二年間の予定と考えており、その間に以下の問題を明らかにしたい。 まず、彼女らの生きてきた母国中国及び日本の社会文化環境を資料や文献で把握する。つぎに、インタビューで彼女たちの日本にいる経験を理解したうえ、彼女たちはコミュニティへの参加、文化実践への参加及びそこでの学びを焦点におき、分析を行う。最後に、日本語を使って自分のポジションを取ろうという彼女たちの生きる姿をストーリーにまとめ、第二言語で生きるという体験を彼女たちの視線から明らかにしたい。 平成23年度の基礎的調査分析では、研究対象である中国人女性たちが生きてきた母国中国及び日本の社会文化環境、日本にいる彼女らの経験を把握するための文献調査及びインタビュー調査を行う予定であった。 (1)留学生研究及び華僑研究などのような関連研究文献、社会歴史文献調査がほぼ終わり、海外学会発表によって様々なコメントをいただき、研究調査の更なる進展を図るための土台が作れたと言える。 (2)インタビュー調査及びデータ初期分析に関して、初期のデータによって2012年9月のニュージーランドの学会発表の資格を取れた。この発表によってこれからの分析視点に関する良いアドバイスが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、日本における私費留学生から永住者になった8人の中国人女性に協力いただき、日本語を使う彼女らの学びに焦点におき、第二言語で生きる彼女らの経験及びアイディンティティの変容をライフストーリーで捉えようとするものである。そのための具体的な計画として、彼女らの生きてきた母国中国及び日本の社会文化環境、日本にいる彼女らの経験を把握した上で、彼女たちはどのように異文化を対峙する中で、何を学び、どのように成長してきたのかを分析し、その結果をストーリーにまとめる。考察では、日本という新しい実践共同体の中で第二言語による新たな自己の獲得とは、彼女らにとってはどのような意味を持つのか、彼女らのアイディンティティの変容との相互関係を包括的に捉える。なお、よりよいデータを収集するため、インタビュー以外に、3ヶ月ごとに協力者たちの話し合いの場を設け、この場で起こることをフィールドノートに記入し、分析資料として使用する。 平成23年度の基礎的調査分析では、研究対象である中国人女性たちが生きてきた母国中国及び日本の社会文化環境、日本にいる彼女らの経験を把握するための文献調査及びインタビュー調査を行う予定であった。 (1)留学生研究及び華僑研究などのような関連研究文献、社会歴史文献調査がほぼ終わり、海外学会発表によって様々なコメントをいただき、研究調査の更なる進展を図るための土台が作れたと言える。 (2)インタビュー調査及びデータ初期分析に関して、初期のデータによって2012年9月のニュージーランドの学会発表の資格を取れた。しかし、初年度のインタビューは中国人女性の8人に一人2回(全部で3回)行い、責任者の4人に一人1回(全部で2回)行う予定であったが、相手の都合もあり、責任者4人へのインタビューは計画通りに行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度では、前年度の残りの調査、それらを踏まえた総合的な検討、研究の総括、報告書の作成を行う予定である。 (1)ストーリーの作成及び追加インタビュー ストーリーの作成は、インタビューで彼女たちの日本にいる経験を理解したうえに行うが、書きながらも必要に応じて情報を収集する。ライフストーリーは時間軸で物事を並べていくが、データ分析は、まず彼女たちがどのようなコミュニティ及び文化実践に参加したのか、そこでどのような学びをしてきたのかを明らかにする。つぎに、彼女たちが日本語を使って自分のポジションを取ろうというプロセスの中には、語らえた不安、葛藤、幸せなどの感情的なものを十分に理解してから、ストーリーにまとめる。 (2)ストーリーの総合考察 本研究は第二言語で生きるという体験を彼女たちの視線から明らかにしようとするものである。考察では、まず、日本という新しい実践共同体の中に第二言語による新たな自己の獲得とは、彼女らにとってはどのようなことなのかを解明したい。つぎに、彼女らのアイディンティティの変容との相互関係の分析を行う。最後に、ジャンダーの視点も取り入れ、協力者の女性たちのことも含めて日本社会にいる女性の問題などを検討したい。最終的に彼女たちの語りによってつくられた物語によって、彼女たちの日本にいる意味及び日本に対する彼女たちの考えを考察で明らかにしたい。 本研究は、教育学、社会学、心理学という多様な視点、多様な関連領域の研究成果を考察に取り入れて比較検討を行う。上記の調査を展開するにあたっては、協力者たちとの長期的な信頼関係を築くことをまず心がける。また、協力者たちと社会との相互関係、変動しつつある母国と異国の社会文化背景をめぐる多方面の研究資料を収集し、マルチな視点、ジャンダーの視点、方角から上記の問題に取り組む。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費用の使用については大体以下のように考えている。1.旅費:30万円ぐらい 2012年9月のニュージーランド学会発表参加及び国内学会の参加(1回)2.物品費:10万円ぐらい 書籍及び文房具等3.謝金など:25万円ぐらい4.その他:5万円ぐらい
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