現在の日本語教育の分野では、「表現文型辞典」という語を冠した(またはそれに類する)辞書が数多く出版されている。本研究では、この「表現文型」に関し、その語が指し示す概念、定義、およびその外延を、既存の「表現文型辞典」やそれを巡る先行研究から明らかにしたものである。具体的には以下の2点を重点的に行った。 (1)「表現文型」の定義・概念をめぐる研究 現在出版されている「表現文型辞典」類を見ると、「表現文型」を明確に定義しているものはほとんどなく、そこに収録されている語からその概念を推し量るしかない。7冊の表現文型辞典を精査した結果、「一般の国語辞書では引けない」文型であり、また、中級以降の「複合表現、複合辞」を「表現文型」としているものが多く、これが現在の共通認識であると言える。ただし、これは、「表現文型」を「構造文型」に対するものとして明確に位置付けた寺村秀夫の定義からは大きく離れたものになっている。 (2)日本語表現文型データベースの作成 上記の問題意識に基づき、現在の「表現文型辞典」類でどのようなものを表現文型としているか、各辞典に収録されている文型をリストアップし、データベース化した(インターネット上で公開予定である)。辞典により文型の表示の仕方が異なるため、共通する文型の表記の統一および文型のバリエーションなどについて、ルール化を行い、データベースを作成した。なお、本研究は「表現文型」という語が指し示す概念の明確化が目的であり、各文型の説明の妥当性については触れていない。
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