研究課題/領域番号 |
23720273
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
宮澤 太聡 早稲田大学, 日本語教育研究科, その他 (90579161)
|
キーワード | 接続表現 / 文末叙述表現 / 連文型 / 文段 / 論理的文章の表現・理解 |
研究概要 |
日本語学習者にとって、レポート・論文等の論理的な文章の理解・表現の習得は、困難であると言われている。本研究は、特に、文を越えたまとまりを意識するための「言語形態的指標」を分析し、文と文との連接・統括関係を捉える「連文型」を認定し、文章を「段」(佐久間2010等)レベルで理解・表現する方法を提示することを目的としている。 連文型を認定するための分析資料として、新書の文章を用い、「段」の成立に関わる「言語形態的指標」として、特に、「接続表現」と「文末表現」を中心に分析をした。作業補助者2名の協力の下、接続表現と文末表現の共起関係から、いくつかの論理的展開のパターンが明らかになった。「原因―結果」のように意味的な説明のみならず、形式とともに提示することは、学習者にとって有効であると考える。また、連続する2文間の論理的関係だけでなく、ある文との関係は「原因―帰結」であっても、それらの「原因―帰結」の全体が他の「段」との関係で新たな「原因―帰結」と原因部となるといった「段の多重性」佐久間(2010)を明らかにした。 そして、日本語学習者がレポート・論文作成時にどのような問題を抱えているのかを分析するために、作文データを収集した。震災の影響で、依頼先の日本語学校の留学生が激減したため、予定の人数を下回るデータしか収集できておらず、困難点の分析はケースに留まっている。 今年度のケースの分析からは、特に、文末表現の選択に問題があることが指摘できる。文末表現が適切に使用されていないことから、過去の経験なのか、一般的な事象なのか、または、ある事象に対する書き手の判断を述べているのかといったことがわからない場合がある。来年度は、データの補充とともに、文を越えて表現したいことがらを、どのような「言語形態的指標」を用いて表現するのかといった連文型の研究成果から、これらの困難点の解決方法を探る。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、以下の3つのセクションに大別できる。① 新書の文章を分析資料とした接続表現と文末表現の共起関係を主とした連文型の認定。② 大学・大学院進学を目指す日本語学習者が抱えるレポート・論文の理解・表現の困難点の分析。③ ②で分析した困難点を克服するための指導方法の提示(①の研究成果と絡めて)。 ①は、2名の研究補助者の協力の下、一定の研究成果が出ており、名古屋大学で開催された日本語教育国際研究大会において研究発表を行った。会場からのご指摘をいただき、現在は、文を越えたことがらの理解・表現のための「言語形態的指標」の有効性について研究を進めている。 一方、②は、協力を依頼した日本語学校の学生数が激減したことから、十分なデータを収集できていない。そのため、困難点が個別のケースとなっており、解決のために①の研究成果が有効であるいう主張に説得力をもたせられておらず、また、母数が少ないことから、学習者の困難点を十分に洗い出したとは言いがたい状況である。 さらに、②のセクションが遅れているため、必然的に、③のセクションにも影響が出ている。学習者の論理的な文章の理解・表現の困難点の分析がまだ十分ではないため、①の研究成果を活かす方法も十分に提示できていない状況である。しかし、ケースの分析は行なっており、データを補充したとしても、その分析の本筋が大きく変更されることはないと考えられる。上記の理由により、学習者のデータ収集が急務である。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究を進める上で、日本語学習者の作文データの収集が最も重要である。協力を依頼した日本語学校の学生数も計画立案時点まで回復しており、データ収集が行える状況である。また、収集したデータの電子データ化、分析に関しても、研究補助者の協力が得られることになっているため、現在遅れている分を取り戻すことができると考えられる。 次年度は、連文型の研究成果および、学習者の論理的文章の分析結果をもとに、論理的文章の理解・表現のための指導項目を提示することを目指す。
|
次年度の研究費の使用計画 |
前年度に行えなかった調査に200,000円、分析アルバイター2名に420,000円、国内成果発表費に100,000円、国外成果発表旅費に260,000円、その他、印刷費や通信費、学会参加費などに80,000円を使用する予定である。 また、分析アルバイター作業用のPC(200,000円程度)を購入し、データ処理の作業効率を上げることを目指す。
|