大学学部留学生のレポートや論文などの論理的文章の中には、「つながり」と「まとまり」を表す言語形式が適切に使用できていないために、読みにくい文章となっているものが少なくない。本研究は、これまで「文型」教育であまり取り上げられることのなかった「接続表現」を中心に、「提題・叙述表現」「指示表現」等との共起関係を分析することで、「文型」を超えた2文・3文、それ以上を射程とした「連文型」を明らかにし、学習者の文章作成の際の指導に役立てることを目的としたものである。 この課題の解決のために、①日本語学習者の作文(要約文)と、②新書の文章を対象として、論理的展開と言語形式の分析を行った。①日本語学習者の作文(要約文)からは、論理的展開の把握はできているが、それを文章として表現する際に、適切な言語形式(特に、接続表現と文末叙述表現)が使用できないという傾向が明らかになった。そこで、②新書の文章の分析では、ある「まとまり」の中心的な内容を表す文(中心文)の前後の接続表現と文末叙述表現の共起関係を分析した。 中心文に最も多く使用された「のである。」を例にすると、先行研究でも指摘されている通り、「つまり、~のである。」と、先行文群を言い換えるかたちでまとめるもの、「だから、~のである。」と先行文群に対して結果を述べるかたちでまとめるものの使用頻度が高いことが確認された。そして、「だから、~のである。」よりも、「そして、~のである。」の使用頻度が高く、「~部」の内容が新情報だった場合、先行文の話題に区切りを付けつつ、さらに、後続文で補足情報が提示されるという文脈展開となることが明らかになった。 「文末叙述表現」の形式が同一であっても、共起する接続表現によって、「つながり」と「まとまり」への関わり方が異なることから、1文単位の「文型」を越えた「連文型」の指導の重要性が示された。
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