本研究は、個人差に起因する要素の中でも、教室外で展開する「インフォーマルな学習実践」、日々の生活の中や課外活動の中で偶発的に起こるインタラクションを通して実現する学習の有無、またその実践の具体的な内容が要因解明の鍵となると考え、その「個人差」の実態とありかの解明を目指すものである。 最終年度である平成25年度は、インフォーマルな学習を促進する環境として、新たにICTを介して活動する教育場面、とくにPBL(Project Based Learning)場面を設定し、その中で学習者らがどのような偶発的な学びを展開するのかに着目し、マルチモーダルな視点から相互行為分析を行った。 具体的には、研究期間前半に収集した教室外のさまざまな場面(例:お花見などの文化交流を趣旨とする日本人と本学留学生のピア活動場面)の談話資料に加え、iPAD、SNSやオンラインドキュメント作成ツールなどを活用したグループワークやフィールドワーク場面など、留学生と日本人学生らが混合した環境において、課題を達成していく際に展開した談話を録画・録音することによってデータ収集を行った。考察を進める中で、これらのICT活用による複数参加者らの協働の必要性や、情報を発信する相手(例 SNSで投稿したり質問したりする相手)が存在することで、必然的に言語アウトプットの正確さや流暢さを学習者自ら向上させようとする傾向が観察でき、インフォーマルな学習の実態をより理解することができた。 平成25年度後半には、これらの談話資料の考察を行い、研究成果として学会での発表と論文執筆の作業を中心に行った。成果発表の場としては、最終年度中に刊行されたものと、近日中に出版へとつながるものが複数計画されている。
|