研究課題/領域番号 |
23720284
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
山本 綾 豊橋技術科学大学, 工学部, 講師 (10376999)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 談話分析 / 語用論 / 第二言語習得 / 日本人英語学習者 / 不同意(disagreement) / 方略 / 談話標識 |
研究概要 |
会話では、時として参加者の間で意見の対立が生じることがある。会話参加者は、理由を述べて相手を説得したり譲歩したりするなどして、対立の解消を図ろうとする。本研究では、意見対立場面においてなされる様々な言語行動を「調整方略」ととらえ、日本語を母語とする英語学習者を対象として談話の分析を試みる。具体的には、学習者が用いる調整方略の特徴を母語話者と比較しながら明らかにするとともに、調整方略の発達過程の一端を実証的に示すことを目指す(研究課題1)。さらに、調整方略の発達がどのような要因によって促されるのか、という問いについて考察を試みる(研究課題2)。初年度は、研究課題1に取り組んだ。(1)不同意と(2)理由を表明する談話に着目し、それぞれの談話構造とその中で用いられる言語形式について分析を行った。(1)についてはnoという否定の標識の使用状況を、(2)については因果関係を示す談話標識becauseの使用状況を調べ、以下の知見を得た。(1)情報要求や確認要求などの質問がなされた場合、学習者は応答としてnoを連続して繰り返す傾向がある(例.no no no no)。一方で、提案や勧誘、評価がなされた場合は、noを用いて明示的に不同意を伝達することは稀である。代わりに用いられるものとして、笑いや「えー」など日本語の談話標識が挙げられる。(2)学習者がbecauseを用いる頻度は母語話者よりも低く、用いる位置は相手から理由を問われた直後が多い。英語圏に滞在する前と後を比較すると、滞在後は会話相手からの問いかけに依存しない自発的な理由表明が増える、という変化が観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画通り、順調に進んでいる。本研究は、大きくは2つの研究課題に取り組むものであるが、初年度は課題1に専念する計画を立てていた。既に一定量の会話資料を収集していたため、速やかに調査・分析に着手でき、研究成果の報告を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に沿って、研究課題1についての調査を継続的に進めるとともに、次年度は課題2(調整方略の発達を促す要因の考察)に着手する。課題1については、調査する言語形式や談話構造を拡充し、より精密に、また多角的に学習者の言語行動とその変化を記述することを目指す。そのために、既に収集した縦断的資料に加えて、学習者と母語話者の接触場面を記録した資料を追加収集する。また、横断的かつ大規模な学習者の話し言葉コーパスを用いて、縦断的な分析を補完し知見の一般化を図りたいと考えている。得られた知見に基づいて課題2に取り組み、言語習得理論をふまえながら検討する。現時点では、「母語話者と接触し相互行為に参加する、という経験を蓄積することにより、調整方略の発達が促される」という仮説を立て、その妥当性を検証するという見通しを持っている。
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次年度の研究費の使用計画 |
継続して必要な支出項目として、備品費、消耗品費、旅費、その他がある。これらは、研究動向の把握や成果報告のための図書や国内・海外旅費、印刷費などに充当する。上記に加えて、資料の追加収集を行うための諸費用を必要とする。主として、会話の撮影と録音に用いる備品や消耗品費、海外旅費、協力者への謝金およびデータベース化作業の一部を依頼する補助者への謝金などの支出が見込まれる。
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