研究課題/領域番号 |
23720287
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研究機関 | 下関市立大学 |
研究代表者 |
浅野 雅樹 下関市立大学, 経済学部, 講師 (70514131)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 国際情報交流 / 中国語教育 / 中国語教材 / 中国語語彙 |
研究概要 |
当初の計画通り、当該年度はまず大学の授業用として使用されている既存の中国語中級テキスト約50部に対して、調査を行った。調査内容は、主に語注の形式、内容とポイント(要点)の内容の二点である。その結果、課文の内容等はテキストにより、多種多様であるが、語注とポイントの部分には全般的に均一性がみられることが明らかになった。語彙を中心としたテキストを作成するためには、まずこの部分の提示法や内容を含めて、テキスト全体の編成を考案する必要性があることを再認識できた。 また中国語語彙論の研究書や論文、第二言語習得に関する研究書や論文を閲読し、日本人の中国語学習者にとって必要で有用性のある語彙論における事項を考察した。その結果、語形、語義、日本語語彙との関係といった各範疇において、中級レベルのテキストのポイント(要点)の部分に盛り込む内容として、何点か適切な事項を見出した。 さらに、日本人学習者の語彙習得状況を観察した上で、学習者に対して語彙のテストを行い、どのようなタイプの語彙が難解で定着することが難しいのかという問題を調査した。またインフォーマント数人に対して、テキストに取り入れるべき新語の調査と、既存のテキストに提示される単語や連語などの適合度と自然度を図るための調査をした。 具体的な成果としては、語彙教育における語義に関する論文一本と、上述した研究内容をまとめた論文を一本を執筆した。そのほか、中国語中級レベル一般学習書を一部、中国語大学授業用テキストを一部を著し、出版するに至った。これらの著書の中に、本研究テーマによる成果の一部を取り入れることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの達成度は本テーマによる研究全体の30%くらいで、まだ最初の段階にあると位置付けられる。ただこれは当初行った計画をほぼ順調に達成しているものと認識している。最初の課題である既存の中級レベルのテキストに対する調査は、計画では日本で出版されているものは50部、中国出版されているものは15部への調査であったが、すでに前者は45部、後者は10部の調査を行うことができた。次の課題の日本人学習者に関して必要で、有用性がある語彙論的な知識の考察については、何部かの語彙論研究書及び対外漢語教育の研究書を閲読した。またこの点に関しては具体的かつ詳細に学習者に対してアンケート調査を行ったうえで、いくつかの語彙論の項目を精査する予定であったが、このアンケート調査については多少不十分な面もあったので、次年度も引き続き、内容や方法等を改善し実施したい。 また現在までの成果は、当該年度3月に研究論文にまとめた。また当該年度、一般学習者向けの学習書と大学授業用のテキストを出版する機会を得たが、これらの著書において、とくに語注の部分に語彙の語形、語義、特殊性、体系性、また日本語語彙との関係性についての内容を取り入れ、新しい語義指導法を見出し、書中に提示できたことは計画外の成果であり、この点も「おおむね順調に進展している」と判断した理由として挙げたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究については、まず2012年度中国語教育学会全国大会にて、これまでの研究成果をまとめた内容で研究発表を行うことが決定しているので、研究そのものを進めるとともに発表に向けての準備をする。 その後はさらに、日本人の学習者にとって必要な語彙論における事項は何かということを考察したうえで、またそれらをどのような形で、授業で使用するテキストに盛り込むかということを実践と理論の両面を重視しながら分析する。研究のテーマは中国語教育に関するものであるが、随時英語教育や日本語教育、また第二言語習得に関する理論や実践例なども参照し、研究を進める予定ある。したがって、これらの方面の研究書や先行論文を閲読、調査する必要性を認識している。 学習者に対しての学習状況の観察やアンケート調査などと並行して、語彙を中心としたテキストの試用版を作成するために、学習者にとって有用性のある個別の約100の語彙を見出し、またテキストに盛り込む語彙論における約25の事項を定めたい。その後はさらに、テキストの編成と照らし合わせながら、それらをテキスト内で提示するフォーマットを定め、実際に作成作業に取り掛かりたい。その試用版がほぼ完成した際には、本人が担当している大学の授業等で使用し、そのテキスト自体にどのような問題が存在するのか。また学習者はこのような語彙を中心としたテキストを使用してどのような感想や意見を持つのかということを観察し、最終的にはこのようなテキストを使用し学習した効果を見極めることを成し遂げたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
まず旅費として、2012年度中国語教育学会全国大会研究発表(6月2日、千葉市)のための参加のほか、10月に開催される中国語学会全国大会(10月27日、京都市)に参加する予定である。そのほか、何回か関連する研究会例会等に参加する。またデーターベースCNKIを利用のため国立国会図書館に赴く予定である。また備品については、研究テーマに関連する研究書を購入する必要があるほか、先行研究調査のための論文の複写依頼等の経費を見積もっている。さらに研究を進めるにあたり、現在使用しているノートPCが老朽化しているので、一台新たに購入する予定をしている。そのほかプリンターインク、PC付属用品、文具等の購入を予定している。また人件費としては、日本人学習者に対する語彙の状況調査のためのアンケート実施を予定している。
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