研究課題/領域番号 |
23720287
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研究機関 | 下関市立大学 |
研究代表者 |
浅野 雅樹 下関市立大学, 経済学部, 准教授 (70514131)
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キーワード | 国際情報交換 / 中国語教育 / 中国語教材 / 中国語語彙 |
研究概要 |
当初の計画通り、第二言語習得研究や言語教育に関する多数の研究書や論文を閲読した。これは語彙を中心とした中国語中級テキスト作成のための意義に対して、理論的な裏付けをするためである。この課題については、当該年度において、多くの時間と労力を費やしたが、その結果おおむね整理できたと認識している。ただ、この点ついては、来年度以降も継続する必要がある。 当該年度において、論文を二本執筆した。一本目は、テキストにおける語注にテーマを限定し、詳細な調査と考察を行ったものである。もう一本の方は、テキストにおける練習問題について、現存のテキストに対する調査と考察、およびテキストにおける語彙学習に関する練習問題導入の可能性について論じた。テキストにおける「語注」と「練習問題」はいずれも、「本文」や「学習ポイント」と同様にテキストの重要な構成要素であるが、この二つに対して、学習者の語彙学習という側面から見た場合の、問題点を指摘ができた。また既存のものとは異なる新しい方法と形式によるテキスト内への導入と提示について具体的に考案できたことは、実績として述べるに値するものであると考えている。 中国語語彙論における事項をテキスト内に取り入れるという課題については、昨年度に引き続き考察をした。大学生の学習者に対する語彙論事項への理解度を測定するアンケートを実施した上で、日本人学習者にとって必要な事項をいくつか選定した。また内容と分量を考慮に入れた上で、実際テキスト内の「ポイント」の部分に導入するという仮定の下、実例を作成した。 今年度の研究実績により、次年度以降の本研究の最終目的である「語彙を中心とした中級テキスト」の作成のための下地がおおむね整ったと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初申請時に計画した点に関しては、おおむね順調に進展しているものと認識している。既存の中国語中級テキストに対する調査、日本人中国語学習者に関する語彙学習や語彙指導に関する考察、テキストにおける構成要素の実例作成、当テキストの試用、というのが当初設定した研究の手順であったが、二番目の「日本人中国語学習者に関する語彙学習や語彙指導に関する考察」までは、当該年度(平成24年度)において、ほぼ完成できたと言える。とくに既存のテキストに対する調査結果により、当初想定した既存のテキストの内容や構成等に関する問題点が、より明確になった点は、本研究の意義を検証するという面でこれまでの最も大きい成果であると言える。当該年度(平成24年度)は、主に第二言語習得や英語教育、日本語教育等に関する理論や教育実践例などを参考にし、なぜ日本人の中国語学習者にとって、語彙学習が必要あるのか、また教員側にとって語彙指導が強調される必要があるのかといった問題に対する考察をある程度行うことができた。この点は今後も継続して考察する必要があるが、本研究の最終目的である「語彙を中心とした中級中国語テキスト」の作成に向けての基盤となる重要な課題であると考えている。 当該年度の研究業績としては、論文が二本、学会発表が三回である。中でも、国際学会においての発表及び論文の投稿については、他国の中国語教育研究者と情報の交換や共有ができた点、評価に値するものと確信している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究を全体的にまとめた最終的な成果を示す論文を執筆する予定である。また、今後作成する「語彙を中心とした中国語中級テキスト」の実例を、学会のポスターセッションなどの場で、提示する予定である。 昨年度に引き続き、第二言語習得研究や言語教育に関する多数の研究書や論文を閲読した上で、本研究が主張する「語彙学習」に関する必要性に対する裏付けを、より一歩進んだ形で試みる。またこれまでの成果を応用し、実際にテキストに導入する際の語彙事項に関する実例(語彙注釈、練習問題、語彙に関する学習ポイントなど)を作成する。この点について現在の段階で最も注目しているのは日中同形語など、日本語の漢語と中国語の語彙の関係性を利用したテキストへの語彙の導入システムの構築である。同形語に関する研究は現在まで盛んに行われているが、まず先行研究の成果を調査し、また参照したい。その上で、日中同形同義語、日中同形類義語、日中同形異義語、日中異形語等に分けた提示方法を確立し、多くの実例の作成を目指したい。またもう一つの課題である中国語語彙論における事項のテキストへどのように取り入れるのかという問題についても、引き続き考察を行う。 前述の成果が得られた後には、テキストの全体的な編成や各課の構成などの整合性を考察し、その後「語彙を中心とした中国語中級テキスト」の試用版を完成させる予定である。完成後は、実際大学の授業などの教育の場で使用し、学習者(テキスト使用者)の状況を観察しながら、本テキストを用いた場合の効果を見極めることを課題とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
まず備品として、第二言語習得研究や言語教育(日本語や英語も含む)に関する書籍、近年主に中国で出版された外国人学習向けの中国語教材、中国語語彙学習辞典や参考書などを購入する予定である。また研究を進めるに当たり必要なプリンターインク、コピー用紙、新型電子辞書、その他文具を購入する予定である。やや高額なものとしては、インクジェットプリンター一台の購入を予定している。また旅費としては、本研究に関連する学会、研究会への参加、また中国学術雑誌データーベースCNKIの利用や、中国語と日本語の語彙対象研究をテーマとした博士論文の閲覧や調査のため、何回か国立国会図書館に赴く予定をしている。また人件費としては、日本人の中国語学習者に対する語彙の学習方法や習得状況を調査するためのアンケート実施を予定している。
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