中国語学習者の語彙学習や語彙習得をより効果的にするという目的に応じた「語彙を中心とした授業用テキスト」の作成が本研究の主題である。これまで、主に大学で使用されている中級テキストの内容や構成を調査、分析した上で、語彙の導入方法等の問題についても考察を行った。また「中国語語彙論体系知識」を教育内容として導入することを提起し、その必要性と重要性についての見解を示した。 本研究の過程において、問題の所在が明らかとなった学習者自身が持つ「中国語語彙論体系知識」の現状を把握するため、昨年度に引き続き、アンケートを作成の上、幾度か実施した。さらにアンケートの調査結果の信頼性と妥当性を高めるため、得られた数値に関する統計的な整理も行った。結果から、主に語義に関する「類義語」や「反義語」また「多義語」などの語義に関する事項や「外来語」などは理解度が高い事項であるが、一方で、「形態素と単語の関係」「語の付属義」「略語」などの事項については理解度が低いと見なせることがわかった。本研究においては、当初よりこの「中国語語彙論体系知識」を中国語の語彙指導に導入することを強調してきたが、さらに具体的に、主に中級テキストの中における「ポイント(学習要点)」の箇所に盛り込むことを述べた。ただ、内容量及び学習時間の制約により、すべての事項を対象とするのは不可能であるため、本アンケート調査の結果に依拠し、理解度が低いと見なされる事項を優先的に取り入れるという方向性を見出した。その後、主に大学で使用する中級テキストの「ポイント」に記すことを想定し、各語彙論の事項についての教授案を作成した。また、一部のものについては、実際、授業等の教育現場において試用し、部分的にではあるものの、効果の検証を行うことができた。
|