研究概要 |
外国語教育では、単なる言語の学習だけで無く、異文化に対する積極的な態度を獲得することも重要な学習目標の一つである。しかし、このような態度の育成手法は明らかにされていない。本研究は、異なる文化背景を持った人々と、英語で積極的にコミュニケーション使用とする態度を育成することを目指した英語教育の手法を開発し、その教育効果を実証的に明らかにすることであった。具体的には、(1)比較的異文化コミュニケーション摩擦がおこりやすい場面(例:依頼行動)におけるコミュニケーション「行動」に教育手法(SSTモデル)を開発した。さらに(2)異文化に対する「認識」を高める教育手法(CAモデル)によって異文化に対する友好的な態度や興味・関心などを高めた後、「行動」の学習を促すSSTモデルを可算的に実施し、その教育的効果を実験的調査で明らかにすることであった。研究対象はこれまでの研究に継続し、異文化教育に適切な時期であるとされる青年期以降(井下、1997)である高校生英語学習者とした。実験では、CAモデルとSSTモデルの2つの手法の教育効果を検討するため、(1)CA→英会話群、(2)CA→SST群、(3)英会話→SST群、(4)英会話→英会話群の4群を設定し介入実験を行った。最終年度は、実験で得られた量的データの処理を行った。結果、先行研究(Ishii, 2009)で確認された、異文化教育タスク群が英会話タスク群に比べて学習者の異文化に対する態度を積極的にさせる効果は、今回の実験では同じ態度尺度では確認できなかった。実験効果測定には、先行研究同様、国際理解に関する学習者の態度を測定する態度尺度を用いたが、異文化教育の学習効果を測定するには最適ではないことがわかった。今後の課題として、異文化教育の学習効果を測定するための尺度を開発する必要性が明らかになった。
|