研究課題/領域番号 |
23720297
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研究機関 | 京都精華大学 |
研究代表者 |
平井 愛 京都精華大学, 人文学部, 講師 (10554339)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 日本人英語学習者 / 文処理 / 動詞下位範疇化情報 |
研究概要 |
■第二言語のメンタルレキシコンに保持されている統語情報 -他動性の指標の調査を実施した。 本研究の最終目的は,他動性などの語の下位範疇化特徴の理解度と産出傾向,および語の処理の速度を測定することによって,英語を外国語として学習する日本人の語の表象が,どのように形成されているのか,そして,それらの情報を,逐次的な文の処理に利用可能か否かを明らかにすることである。さらに,第二言語理解および産出プロセスの解明のための心理言語学的実験を行う際の指標となるよう,学習者の語の理解度・産出傾向と熟達度の関係や母語話者の産出傾向との違いも明らかにする。 当該年度では,日本人英語学習者の中でも初級者・初中級者に焦点を当て,熟達度の異なる第2言語学習者が,目標言語である英語の動詞他動性情報をどの程度有していて,それをどの程度リアルタイムの文理解プロセスで利用できているかを検討した。具体的には,自動詞・他動詞を含む16の動詞に対する文産出傾向を調べるための文産出課題と,これらの他動性が異なる動詞を含むガーデンパス文を刺激とする自己ペース読み課題の2つの課題を実施した。 その結果,学習者が有する動詞他動性に関する知識とその知識の利用にはかなりの差があるが,熟達度が上がるにつれて他動性情報の利用が効率的になることなどが明らかとなった。また、特に自動詞および他動性の低い動詞の産出傾向は初級・初中級の学習者では,母語話者の産出傾向とは異なっていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度実施予定であった「時間計測を伴う文法性判断課題」は,上級者・母語話者データを除きほぼ終了している。現在これらのデータを継続的に収集している。また,平成24年度実施予定であった「産出データに基づく語の下位範疇化特徴の選好性調査」のうちの「文産出課題」に関しては,実施の都合上,平成23年度に調査済みである。なお,平成23年度実施予定であった「時間計測を伴わない統語理解に関する文法性判断課題」(初級者・中級者・上級者を対象とした実験)は調査の都合上,平成24年度の実施に変更した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は以下の3つの課題を実施予定である。また、データの収集・分析を通して,平成23年度に実施した日本人英語学習者の「語の産出傾向」との比較検証を行う。(1)「統語理解に関する文法性判断課題・時間計測を伴わないオフライン実験」(文を読み,文法的に正しいかどうかを判断してもらう課題)(2)「文完成課題」(Early/Late Closure文を用い,syntactic boundaryまで提示し,文を完成してもらう課題)(3)「時間計測を伴う文法性判断課題」(文をコンピュータで提示し,文法的に正しいかどうか即時で判断してもらう課題)この課題に関しては、初級者・中級者のデータは平成23年度に収集済みである。今年度は上級者および母語話者のデータを収集する。
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次年度の研究費の使用計画 |
予算は大きくに以下に使用する計画である。(1)コンピュータを使用した時間計測を伴うオンライン実験の参加者に,オンライン実験の参加者に謝礼として1000円を支払う予定である。(2)研究成果発表のために,旅費および宿泊費を計上している。具体的には2012年9月に開催されるBAAL(イギリス応用言語学会),2013年1月のHICE(ハワイ国際教育学会),2013年3月のAAAL(アメリカ応用言語学会)での発表を計画している。
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