研究課題/領域番号 |
23720303
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研究機関 | 立命館アジア太平洋大学 |
研究代表者 |
SIEGEL 亜紀 立命館アジア太平洋大学, 言語教育センター, 准教授 (50454963)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 多文化コミュニケーション |
研究概要 |
本研究では研究方法として (a)文献研究と(b)会話分析研究の2つの手法を使用することにより日本人学習者の多文化対話活動における相互行為と語用論的能力の発達過程の徹底解明を行う。そして、平成23年度は主に文献研究、会話録画データ収集、および録画データの文字化を行うことを目標とした。(a) 文献研究:従来の語用論習得研究において学習者の語用論的能力の発達過程はアンケート、Discourse Completion Task、ロールプレイなどの使用が主流だったが、近年になりよりミクロ的視点から発達過程と環境を分析する必要があるというコンセンサスが作られつつあることが分かった。特に、「留学」という環境においては語用論的能力が一般的に発達するが、詳細な個別学習環境状況分析の結果、学習者により環境の活用方法が異なり、有効利用する学生がより発達する、また、留学前の語学能力の差により留学中の発達に大きな差がうまれるということが明らかになった。そのため、本研究における詳細な環境の分析、また初期における語学能力の分析を行った重要性が裏付けられた。また、日本でありながら日常的に授業外において留学生と英語で交流できる当研究環境におけるミクロ的視点による研究はまだなく、当該研究が意義あるものと再確認された。(b) 会話分析研究:4名の日本人英語学習者から、月2回、毎回30分程度、10ヶ月に渡り会話の録画を行い、約40時間の会話データを収集した。そのデータをJefferson (1985, 2004) に従い文字化し、分析用データを作成した。また、TOEFLのスコアも各協力者より4回のスコアを収集し、個別インタビューを行うことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の計画通り、文献研究、データ収集を完了、データ分析を開始した。文献研究からは上記の通り、興味深い結果を得ることができた。また、初期の段階におけるデータ分析結果をASIA TEFL国際学会において結果発表を行った。特に、データ収集は計画より多くの録画時間を確保することができ、データが多い結果となった。さらに通常の会話データに加え、研究代表者との個別インタビューも実行・録音することができた。そのため、より多くの事例を分析することができ、その結果より深い分析結果が得られると考える。一方で、データが増えた反面、録画データの文字化と分析に時間が想定より要している。平成24年度はデータ分析に特に力を入れていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、平成23年度に収集した会話データを会話分析を使用し、相互行為の連鎖的な組織と語用論的能力の発達過程をミクロ社会科学的に分析する。具体的には、会話分析(Sacks et al., 1974) を使用することにより、日本人学習者の多文化対話活動における相互行為と語用論的能力の発達過程を徹底に解明する。特に、分析においては着目する点は、相互行為の連鎖的な組織と語用論である。これらの項目についてまず、日本人学習者と留学生間の発話活動を分析することより明確化し、その発達過程をミクロかつ縦断的に分析する。データの分析結果は、会話分析の専門家であるDr. Paul Seedhouse (承諾済)の協力を得て、その妥当性・信頼性を確保する。また、包括的な英語能力の発達を上記分析データと比較するため、調査開始時、中間点、そして終了時のTOEFLスコアも参考資料として使用する。また、この結果を文献研究で得られた結果の比較・検証を行うことにより教育的示唆および英語語用論教育の基礎的資料を作成する。そして、得られた結果の検証・統合を行うことにより英語語用論教育への教育的示唆および教材開発に応用可能な基礎的資料を作成する。また、研究成果は学会・論文発表に加え、他の研究者や教育者が活用できる会話音声データとその文字化データのコーパスを構築し、Web公開をしていきたいと考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記計画達成のため、研究費はデータ分析補助への調査協力者、会話分析専門家への訪問、研究成果発表、Web公開準備補助へ使用する考えである。特に、データ分析に力を入れていく。また、研究成果発表はBAAL(英国), CLaSIC(シンガポール)など国際学会にて行う予定である。
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